36 大掃除
「なあジミー、どういうことなんだ、これは」
「お、俺にわかると思うか?そ、その、すごく大変なことだってことくらいしか…」
「レイ兄…これ、みんな大丈夫かな…?」
小高い場所から、三人の少年たちが街を見下ろしていた。
目下の市街地では、軍人と住民による殺し合い…いや、最早一方的な虐殺となってしまった何かが行われていた。
彼らの十余年ほどしかない人生経験によってでは、この状況を理解することなどできるはずもなかった。
「ブルペスタに…戻ろう」
「ちょっと待てレイ!この中を突っ切ってくのか!?こ、殺されるぞ!」
「じゃあどこに安全な場所があるっていうんだよ!」
斜面に這うように造られた街の構造により、上の様子がどのようなものかわからないが、見える限り色々な場所で殺し合いが起きている。上空に浮かぶ|球のようで傘のような物からは黒い塊が投下され、着弾点が爆発したことも確認している。
「おい…じゃあよ…リンは!リンはどうすんだよ!?」
「落ち着け。リンは確か、アズーの家に遊び行くと言っていたな?」
「あ、ああ、そう言っていたはずだ」
「ここからブルペスタへ行くとき、アズーの家の近くを通ってもそこまで遠回りにはならないはずだ。それで…いいか?」
実際、アズーの家の近くとブルペスタのある辺りでは爆発が起きていなかった。
「すまん、頼む…」
「ティトもいいか?」
「僕は…一人だったら死んじゃうからね」
「死なせねえよ、俺らがついてる」
「…うん!」
三人の少年は、駆け出した。
* * *
「続々と軍隊が集まってきてるな。これだったら自体の鎮圧もすぐだろ」
「……」
「どうしたんだよ師匠、黙り込んで」
「あのな、アズー…」
「ん?」
「あれは、俺たちが戦うべき『敵』だ」
「は?どういうことだよ」
貧民街で起こった大規模な暴動。それを鎮圧するために軍が出動した。しかし、軍は敵という。さっぱりわからんが…
「もしかして、主犯がボスなのか?」
「そんなことあるわけねえだろ!」
珍しく師匠に怒鳴られた。その顔には、何かに対する本気の感情が写っていた。
「…すまねえ、つい声がデカくなっちまった」
「お、おう、いいよ。で、なにがあってこんな物騒な雰囲気になってんだ?」
「上、見てみろ」
「なんだあれは…?気球?しかもそっからあれは…爆弾…なのか?」
「そうさ。これはいわゆる、大掃除だ」
「んな…」
「そろそろ国際会議があるだろ?綺麗な先進都市の街並みに、汚い貧民街は邪魔でしかないのさ」
コンフィデンス…そうか、もうそんな時期か。ダンクスは東ルヴル大陸で最も力のある都市だ。だからって…納得できねえ。
「それにしたって!…時期が、早すぎないか?」
「俺もそう思う。だが、起きてることだけが事実だ」
今の俺の頭を占めるのは、ただ一つ。
「…マフィ」
「助けに行きたいか?」
「ああ…」
たしか、うちでリンと遊ぶって言ってたはずだ。
「本来は最優先でアジトに向かうが…お前は行ってこい。きっとお前の帰りを待ってるぜ」
「…ありがとう」
「いいさ、死ぬなよ。」
「そっちこそ!」




