表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/58

34 勇者の戦い方

 真っ直ぐに、ただひたすら真っ直ぐに敵を目指す。あちらもそれに気づいたようで、盾となる兵士が増える。


「通すなっ!」


「邪魔だよ、『爆砕クラッシュ』」


 豪快な爆発音と共に前方一帯が砕け散る。見栄と対物破壊に重きを置いた、派手さ重視の魔道。


 敵の人柄は事前に調査してある。ここまで目立てば間違いなく…


「おめぇがァ!大将かァ!?」


 やはり来た、筋肉と暴威の塊(デカブツ)。おそらく先ほどのバリスタも、こいつが投擲・・したものだろう。この世界の人間は、得てして人ならざる能力を持っていることがある。それがこの世界の標準である以上、慣れなくてはならない。自分も十分に化け物だということも理解しいるが故にだ。


「ジュエニ王国第十一大隊隊長おうこくだいじゅういちだいたいたいちょう、ファウスト」


「リュブリヤナ共和国遠征軍軍団長きょうわこくえんせいぐんぐんだんちょォ、カンロだァ!」


 名乗ると同時、互いの武器が火花を上げてぶつかり合った。敵の武器は矛、デカブツにはお似合いだな。


「さすがは勇者だなァ…そのヒョロい剣でようやるぜェ」


「腐っても将軍だしな。鍛治の技術においても、ジュエニは進んでるぞ」


「ますますッ!奪いてえなァ!」


 豪快な突き。正直受けるだけでも手一杯なのでなんとか受け流す。


「強いな…こうなったら、『複思考マルチプル』」


 精神魔法(生魔法の一種)で思考速度を上げ、一時的に同時並列思考を可能にする魔道だ。使い始めて間もないため、せいぜい1.5人分ほどの思考量にしかならないが…十分だ。


「なんか変わったかァ!?」


「その身で体感しな」


 片方の思考が剣を振るい、常に最適な位置取りから反撃のチャンスを作る。もう片方の思考が担うのは、魔道による攻撃と補助だ。


「『岩砲・旋(ドリル)』『岩砲・曲(ピッケル)』『岩砲・扇(スコップ)』…これを『複写ミラー』『多重複写カガミアワセ』、そんで『舜天・昊(ソウテン)』」


「うおおおおおォ!?」


 流石のデカブツも狼狽うろたえた様子を見せる。単純な剣の腕なら互角。あとは魔道で倒し切るまで。


「くっ…この…ちょこまかとォ!」


 定期的に襲い来る乱舞攻撃。巻き込まれちゃたまらないので、反射的に距離を取る。が、そんな時間稼ぎに意味はない。


「『舜天・轟(ヘキレキ)』…『舜歩しゅんぽメイ』!」


 瞬時に間合いを詰め、フェイントを挟み死角へ移動、大きく切り払って相手の腕を切り落とす。


「があああァ!?」


「『舜天・疾(トンボ)』!」


 やぶれかぶれの一撃を跳んで避け、空を蹴り(・・・・)一閃。


 相手の首が空に舞うのを見届けて、剣についた血を払う。


「強かった…『舜歩しゅんぽ』」


 指揮官殺しまでが役割である。他を相手できるほど体力も残ってない。


「クソッ…撤退準備だ!」


 敵の副官らしき奴の声が聞こえた。


   *   *   *


 開いた窓から指揮官室に突っ込むと、部下に命令をしていたスミレが、驚いた様子で駆け寄ってきた。


「これは…全部返り血か、よかった」


「ああ、あとすまねえが、そこのソファ使っていいか?」


「ああいいよ…そりゃあ疲れるだろうさ。一体何してきたのか知らないけどね」


 敵を瞬殺するために、短時間で魔道をバカみたいに使いまくった。我ながら、疲れて当然だと思う。あとそろそろ鎧が邪魔だな。


ったのかい?」


「確実にな」


 この世界は、圧倒的に強い『個』の存在がある。故に、俺たち冒険者のような軍があると言っても過言ではない。今回の作戦も、あちらの世界では成し得ない、というか考えられもしないだろう。


「よし…『猛鷲もうじゅ』に追討命令!到着し次第、『山雉やまきじ野兎のうさぎ』に準ずる部隊は撤退しな!」


「手際も速い。やっぱ指揮はお前が適任だな」


「そんなことないさ。セリアとかのほうがもっと…」


姉御あねご!失礼しやす!緊急です!」


「なんだいキッカ?言ってみな」


 スミレの部下であるキッカは、将軍の俺がいることに気づきもせず、慌てながらも報告する。


「『野原のはらのハイエナ』…ガザの駐留部隊からの急報で、第三大隊・・・・からの(・・・)襲撃・・を受けた(・・・・)、とのことです!」


「…はぁ!?どういうことだよ!」


「落ち着けスミレ。誤報の可能性は?」


「しょ、将軍…あ!はい、あの、き、急報を示す暗号を同時に受け取りました」


 この大隊では、急報と訃報にそれぞれ暗号がある。悪戯いたずらを防ぐためだ。


「…今はとにかく情報が欲しい。スミレ、全軍に撤退命令を」


「あいよ」


「キッカ、申し訳ないが、『黒烏くろう』のフォードに調査命令を出しに行ってきてくれ」


「り、了解しました!」


 こういうときに怖いのは、背後からの襲撃だ。ロニアに『白鷺しらさぎ』と『斑鳩いかるが』、シビリティアには『山雉と野兎』と『猛鷲』、『黒烏くろう』、『紅孔雀べにくじゃく』に任せるか。


 さて、ここからダンクスまで3000kmほど。こっちの世界の乗り物で街道飛ばしても、二日ほどかかってしまうか…


 紺野…無事だよな…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ