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32 試験

俺たちがニアフックのチンピラを打ち負かした後、そのまま彼らとは仲良くなった。強いやつを歓迎する、というスタンスで出来上がった組織のようで、手厚い歓迎を受けたのだ。そうして俺たちは、ニアフック全域でその顔が知られることとなった。


「いやーあいつら、いい奴らだったなあ」


こういうとき、大抵最初に口を開くのはニースだ。


「そうだね…俺たちも、いい経験になった」


「そういうレイは、自分の攻撃が通ってなくて慌ててただろ」


「うるさいジミー!あれは相手が固すぎたんだ!」


「俺よりも?」


「そんなことも…ないけど…」


ないんだ。やっぱりうちのメンツがいちばん怖いわ。


   *   *   *


受験当日。


今まで遊びまくってしまった。ガザを超えて様々な場所に喧嘩をしに行き、その全てを勝利で収めた。いやほとんどあの三人のおかげだけれども。


そして受験会場、ここフェスタシア。はいそうです、卒業認定試験そつぎょうにんていしけんでも来ました。志望校自体は『ミアム公国こうこく』の『ミアム公立大学こうりつだいがく』だけどね。なんと海外受験が可能で、こうしてフェスタシアでも受けることができる。


この大学の良いところ、それは全寮制であることだ。四年間の衣食住の補償、これは本当に嬉しい。また、満足に研究ができる設備があることも確認済み。なぜか色々な大学、高等学校について知っていた師匠のおかげだ。


入試科目は、『魔道学』『数学』『科学』の計三つ。魔道科が看板学部であるからか、毎年難易度の高い魔道学が出るそうだ。当然俺も魔道科を志望しているわけで、今まで魔道オンリーで勉強してきたにも関わらず、ものすごい不安だ。


「やめ」


前世と大して変わらない形式の試験が終わった。科学と数学を終え、残すところ魔道学だけだ。前世の知識フル活用で、誰かさんの左手の法則とか誰かさんの互除法とか使って解かせていただいた。異世界に来てまで使うとは、思わなかったけど。


にしてもやはり、師匠の授業の方が数段上だ。さらに言うなら、前世の大学受験から見れば児戯じぎにも等しい。やはり、魔道に頼ると遅れるものなのかもしれない。不自然な文化の発展も、異世界からの転生者のもたらしたものなのだろう。


「開始」


さて本題の魔道学。


大問の一つ目のこれは…等界負恒等式とうかいふこうとうしきか。力魔法に絡めた式なんかで使われるやつって師匠は言ってたな。誘導に沿って式を立てさせ、穴埋め部分でも知識をはかる。良問だと思うけど、一つ目だからかそれなりに簡単だ。


大問二つ目…あー、魔道式まどうしき効率化こうりつかか。


基本的に、魔道に対して式を立てる場合は文字に起こす。脳内で素早く組み立てができればそれに越したことはないが、文に起こすことで、思考を整理して無駄を省くことができる。また、共有できるというのもメリットだ。


多分この魔道式、一定のラインまで効率化できれば部分点、もしくは満点がもらえるんだろう。大問は全部で三つある以上、捨て問だな。最後に回そうか。


大問三つ目、これは…予測演算よそくえんざんかな。


魔道式に対して、総合的に効果を計る能力をいてる問題ね。要素に対して、実際の効果を選択肢から選ぶ感じ…ふむ。これは真面目に解こう。


……終わり。本当に使うときのために、師匠からみっちり教え込まれているおかげで、割と正確に解けたのではないだろうか。大問二も思ったより時間がかからず、心配も杞憂きゆうで済んだ気がする。残り五分ほど、妥当な時間だろうし、見直しでもするか。


「やめ」


よっし終わり!集中しすぎて疲れたし、帰って寝るか。師匠が迎えに来るって言ってたが、どこら辺で待って…あれかな?それなりに外が寒いせいでマフラーすら目立たないが、二年も行動を共にすればすぐに判別もつくようになるんだな。前世であれだけ人の名前と顔を覚えられなかったのに、成長だ。


「お、戻ったか …その、どうだった」


「まずまず。師匠の予想通り、等界恒等式とうかいこうとうしき負荷恒等形ふかこうとうけいが出たよ」


「やっぱり出たか!そうだよなあ、出るよあれは、出る。あんだけ練習したし、それなりにできたろ」


 なんであんたが自慢げなんだよ。


「上手く行きゃ満点だな、多分。そこまで難しくはない」


「そうか!お前もなかなかできるようになってんじゃねえか!どんな問題かは知らんけど、よくやったな!」


 そう言って頭を撫で…ぐしぐしと手を押し付ける。痛いっす。


「うあ、この!やめろ!」


「ははは!今日はとりあえず祝いだ!なんか欲しいもんあるか?」


「まずはひとときの休養。貰えるんなら精一杯強請(ねだ)ってやるから、とりあえず帰って休ませてくれ」


「強欲だな〜だがよし。今回は俺が許してやろう、特別にな」


「何が特別で何を許されなきゃいけないんだよ。いいから帰ろうぜ」


「はは、おうよ」


 俺たちは、見慣れたスラム街の中へ足を進めていった。


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