30 大都市『フェスタシア』
「準備できたぞ」
「よし、行くかアズー!」
俺たちは、卒業認定試験の申し込みのために「フェスタシア」という街に向かっていた。といっても同じ「ダンクス」の中なので、たいした移動ではない。「ガザ」の外縁から鉄道に乗る予定だしな。
というか問題はその時期だよね。あんまりテンポ早すぎて怖くなっちゃう。
「さて、そろそろ駅だぞ」
「あいよ…なんか、どこまで行ってもガザって感じだな」
「まーな。この町の由来にも関係してくるんだ、教えたと思うが…」
「この国に四つある特別区制定市における計20の特別区の中で最も一人当たり総所得が少ない」
「完璧だな。大丈夫だろう」
「…ふー、ありがとうな」
すっと答えが出たことに、思わず安堵の息が漏れる。
内心めっちゃ緊張していた。前世と違って、みんなの期待がかかっている。その上、経費が全て組織から出ているのだ。要はマフィアから借りた金である。怖すぎんだろ…
「ったく、緊張すんなって…言っても無駄だよな」
自嘲気味に笑う師匠。
「まあお前なら受かるよ。俺が補償しよう」
「それ、マジで受かりそうもない奴以外はみんな言われるんだよ」
「つっても、あれよ。この試験倍率とかないからよ、点取りゃ受かるんだ」
「それは…そうなんだけどよ…」
今更何を言っても遅い。そろそろ腹を括ろうか。
* * *
駅に着いたが、なるほどこれは『改札』だ。幼い頃家族で行った遊園地のゲートを彷彿させる。
「おお〜立派なもんだな」
「だろ?ジュエニが誇る都市鉄道だ」
曰く、ジュエニ鉄道は、都市外縁と都市外縁を結ぶ大動脈のような路線と、都市内部に張り巡らされた毛細血管のような路線とで構成されるらしい。そこら辺は前世と似ているところ、転生者が技師として何かを遺したか、文明の発展と共にこうなるのか、疑問は尽きないな。
「えらく興味津々だな。もう緊張はほぐれたか?お坊ちゃん」
「ガキ扱いすんな。おかげさまで」
手をヒラヒラと振って適当にあしらう。たしかに今は緊張していない。だらけるのもアウトだが、このくらいがベストだろう。
* * *
「うわあ…すげえ…」
さすがに世界でも有数の大都市である。前世と比べてもかなりの発展具合が窺える。聳え立つ摩天楼、舗装された道路、自動車のようなものも走っている。
「なあ師匠、あの自動車、どうやって走ってんだ?」
「あーあれか?この前説明した、回転磁石だ。そこに力魔法が手助けして、前の二つの車輪を回してるっていう構造だ」
つまりモーター、実質電気自動車か。
「んじゃあ、力魔法はどうやってかけてんだ?」
「買うんだよ、魔道書を。ダンクスには二箇所しかねえが、世界中で普及してるから割とどこでも売ってるぞ」
なるほど、都会はやっぱり面白いな。
「それよりもほら、あの建物が会場だ。そんでこいつが受付の書類。これ、本人だって証明する効果ないから、絶対盗られるなよ」
無くすなよ、もとい盗られるなよ。この世界怖すぎ。
「おう…ここまでありがとよ、行ってくる」
「これ終わったら次の勉強が待ってるんだ、こんなんとっとと片付けてこい」
「…おう!」
優しい師匠だ。




