28 貧民の娯楽
タイトルの縛り、ネタが尽きそうでやめました……たくさん書く予定なので……
一年半が経った。
「行くぞおめえらァ!」
「「おお!」」
俺たちは、教会の連中と相対していた。
…語弊がある。正確には、教会の子ども軍団と睨み合っていた。教会といっても、スラムの教会はほとんど孤児院のようなものである。
そしてやはりコミュニティごとに対立するのが、貧しい街の子供たちだ。全部がそうなのかは知らんけど。さらに言うと、喧嘩は遊びである。勝ち負け程度で何かが変わるわけでもない。
そういうわけで、ガザ北側を取り仕切る教会連中15人と戦っていた。三人ほどデカい子供たちがいて、その三人を筆頭に据える強いチームだ。人数も多い。
「やるぞニース」
「おう…久々のケンカだ」
「うおおお!かかってこい!」
「大丈夫かな…みんなの役に立たなきゃ!」
「大丈夫さティト、日頃の成果を見せてやれ」
味方の様子を見渡して、ニースは手を前に出した。
「よし…突撃!」
そうして、こちら側が突撃する形で戦いが始まった。
…しかして戦況はと言うと、圧倒していた、こちらが、俺たち五人が。
軽く作戦立てただけなのに、驚くほどスムーズに敵が減る。
いや、俺たちの個々の力の賜物なのかもしれない。ティトですら、背丈が二回りほども違う相手二人とやり合っている。
これ、いちばん弱いの俺だな。せっかくだから魔道も使ってみたいけど、誰か巻き込んだらやだし。なんなら卑怯な気がして武器持ってないし。
「レイ!」
「おう!」
レイの強烈な蹴りが、一番デカいやつを後ろから吹っ飛ばす。突然蹴られたそいつは、何もわからぬまま正面のニースに顔面を殴られ、鼻血を吹いて倒れた。
「ふうっと、これで終わりだな。ティト、大丈夫か?」
「だいじょうぶ!」
言いながらティトは高く跳び、ガードが間に合わなかった相手の横面を蹴り飛ばした。
「ジミー!」
「問題ねえ!」
背負い投げに似た姿勢で、相手を叩きつけるでもなく遠くに吹っ飛ばす。人を投げてるとは思えないほどの勢いで遠くへ飛ばし、壁に激突させていた。
「こっちも終わったよ、ニース」
「お、アズーか。よし、このケンカ、俺たちの勝ちだ!」
盛大に勝ち鬨を上げる。これでガザの少年グループは、全て潰したことになるらしい。現役マフィアの特訓の凄さが伝わった。
* * *
「なあアズー」
「どうした師匠」
「お前もそろそろ、服とかを見に行かないか?」
「…金が」
「ある」
「…時間も」
「ある」
「行こう」
「よし」
というわけで、商業地区『ナイ』の市場へ行くことになり、知らない道をまた歩いている。このときばかりは保護者が必須だな。
「まあ、ナイと言っても、栄えてる側にあるぜ、その店は。ニアフックみたいな場所じゃねえ」
「ああ、ニースの次の標的か」
「標的だ?」
「俺ら、ガザは全部潰したから、次は隣のニアフックを潰そうって話になったんだ。先生にも話は通しといてくれ」
「んなもん自分でやれ。それと、ニアフックは強いぞ。ガキの事情は知らんが、向こうの大人にはガチの喧嘩集団がいる。ブルぺスタの精鋭で行けばボコボコだが、一応気をつけとけ」
「ん、あいつに言っておくわ」
「おお」
そんなこんなで着いた店…いや、ボロい古着屋って言い方が似合うな。
この世界の衣服も前世とほとんど遜色なく、強いて言うなら肌触りがイマイチなくらいの品質だった。あと、柄はあるけどイラストはない。そりゃそうなんだけどね。
値段は5ルイ均一らしい…価値基準がわからないから、高いのか安いのかわからん。
「一応お前に、20ルイ預けとく。好きなもん買え。おれはあっち見てるから」
「あいよ師匠」
今着てるボロ布、形としてはTシャツだし、体にフィットしてるからいいんだけど、そうせならボタンシャツが買いたいな。ボタンっていう文化があればいいけど。
…あるんだ、サイズ大きいから買えないけど。よく考えたら俺の体、今11、2歳とかそこらだもんな。
普通のなんか、ここらへんのポロシャツ的なやつにしとこう。ついでにこの大きめのローブ…買っていいよな?五ルイだもんな?フード付きだし、こんなん憧れだろ。
「…ねいしゃす」
そう言って、ポロシャツ二枚と長ズボン、精一杯悩んだローブも一緒に台に乗せる。
「まいど、20ルイだ」
「ん」
10ルイ紙幣二枚を取り出し、おっさんに預ける。
…そうか、レジ袋なんてもんはないよな。インベントリ的なものもないし、普通に持ってくか。
「気をつけろよー」
…冷静に考えたら、気のいいおっさんだな。ほとんど何も言ってなかった俺に対して、こんなに気遣ってくれるとは。
「おいアズー、おせえぞ。40分も経ってるぜ」
あ、そんなに待たせてましたか。




