27 部下がいるということ
十日目、ようやく呼び寄せていた全てのクランが揃った。合計して二万と百五十ほど。元々ここに居たクランを抜いても二万を超えてしまう程の数が、この街に揃っていた。
また、ひとえにクランと言えど、その規模は大小様々である。四人以上でまとめてクランとするように、とだけ言ってあるため、『蜂房の郷』のように三千人越えのクランも存在してしまうのだ。
ちなみに将軍である自分までもが、例外なくクランに所属している。『鶴首』っていう、幹部周りで構成したクランに。
「にしてもセリア、軍服も似合うのな」
「おにーさんだって、いつもの鎧はどっかやったじゃん。頭が軍服だと、幹部周りも軍服にしたがるもんなの」
「それもそうか。ちょうどこれから発表することにも関係あるしな」
そう、俺たちは今、会議室に向かっていた。これから幹部総会だ。
* * *
「おや、早いじゃないか。白鷺の」
二本の刀を椅子にかけた、着物姿の女性が声をかける。
「むう!二トンはいつも早いの!前までがいつもより遅いだけなの!」
意を唱えるのはいつもの白髪少女、『ニトン』。
「そういうスミレ君こそ、サボらない時点で偉いんじゃないか?」
「うるさいよ斑鳩の、斬りたくなるだろうが」
英国紳士風の服に身を包んだ、『斑鳩』の代表『テディオック=イレギュレイ』に向かって、殺意を込めて睨みを飛ばす和風女剣士。
「まあまあお二人とも。ここは些か人が多い、緊張もあるのでしょう」
静かに宥めるのは、老執事のような格好の男、『フォード』。
「枕がバカみたいに固くて寝れなかっただけじゃねえのか?」
身の丈ほどもある大剣を後ろの壁に立てかけ椅子に腰掛ける、大柄な女性は『スルーヴ』という。
「遅いですよ、スルーヴさん。それに、二トンさんはやはりこの会議の重要さを理解してはや…」
「当たりなの〜!スルーヴはすごいの!」
「ええっ!?」
二トンの割り込みで落胆する、メガネをかけた青髪の少女、ニナ。
会議室には、六人の大幹部が揃っていた。大幹部は合計九人、冒険者の数と性質を考慮してあるため、他の三人は未だシビリティアへの招集がかかっていない。
スルーヴが到着して一分と少しが経った頃、扉の開く音が響いた。と同時に会議室は静寂に包まれた。
「よし、六人揃って…いるな!」
勇者、現着。歩きながら人数を確かめ、自席の前に立つ。セリアもその隣に控えた。
「んじゃ、始めようか。起立!礼!…よし」
その場の全員が、勇者の号令に対して瞬時に行動する。
勇者も場の全員と同様に席に着く。
「まあ、先に重要事項からいくか。セリア、よろしく」
「はい」
そう言って立ち上がったセリアは、手元の書類に目を通しながら説明していく。
「まずは、今回の大規模交換派遣について。みなさんもご存知の通り、我々第十一特殊大隊は、第三大隊との一時的な任務交換という形でここに来ました。しかし、今しがた本部から連絡があり、正式な軍隊として、このシビリティアの地を任されることになりました」
「おい、ちょっと待ってくれよ大将。アタシらがここにいるのは一年間のはずだったよな?どうして変わってんだ?」
「すまないスルーヴ。これは俺の失態だ」
「…フン、まあいい。アタシ以外の奴らにもせいぜい、気を使ってやるんだな」
「たいしょーは王様の命令に弱いからしょうがないの」
「そ、そんなことありません。きっと将軍は、止むに止まれぬ事情があって…はっ!もしや何かの事件!?」
「そんなことなくて、書簡で全てが決まっていたんだ。その分軍資金ばっかり釣り上がったけどな」
「ええっ!?」
ニナはまた勝手な勘違いで顔を赤らめている。
「…というわけで、我々は常備軍としてこの街に留まることとなりました。そのことについて、将軍から、どうぞ」
促すセリアに対し、椅子に座ったまま口を開く。
「勝手に決まったことではあるが、一応のこと俺たちはこの地を任された。知ってるとは思うが、ここは隣国の国土に突き出した形となっている。しかも相当仲の悪い国の、な。はっきり言って左遷…いや、もっとひどい形だ」
静寂。誰もが口を噤んでいる。
「まあでも、ここは今から俺たちの拠点だ。押し付けられたとはいえ、俺はやるぞ、大将としてこの街を、州を守り抜く。この軍は国防にも団体行動にも向いていない。だが俺は、その先まで考えている。敵を叩きのめした、その先だ。問おう、この野望について行きたい奴はいるか?」
「…大将の」
一拍おいて、スミレが口を開く。
「…おう」
「私と私の軍は既に腹を決めている。この遠征に来る前にな」
「儂らは、貴方様に付き従うと決めた身ですぞ」
「大体こんなに美味そうな戦乱、手放しちゃ惜しいってもんだ」
「わわ、わたしだって!その、将軍のお役に…立ちたいです!」
「たいしょーはどんかんなの」
「みんな考えてることは同じさ。僕たちは君に惹かれ、きみの背中を追いかけるためにここにいるんだ。見くびってもらっちゃ困るな」
胸が熱くなる。彼らに支えられて生きている実感がする。前世だったら、命をかけた信頼など目にすることもなかっただろう。
異世界もなかなか悪くないな。
今現在で言うなら勇者君パートの方が書いてて楽しいですね。




