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26 左遷されたピュアブラック企業

惨憺たるものだった。


郊外では荒れた畑や濁った河が目立ち、都市部には治安など微塵も感じさせない風景が広がっていた。聞くより先に、衰退という概念を感じた。


「おにーさん、第三はもう撤収したって。基地には最低限しか残ってなかったし、それも今帰り支度をしてるとこ」


「そうか、ありがとう」


これだけ物騒な街にしといて、自分たちだけトンズラしやがったな。第三の任務の杜撰さが伺えるぜ。顔も見たことないけど、許せねえ。


「とりあえず入るか…セリア、官位持ちを全て集めて駐屯地に移動、残ってる奴らとでいいから引き継ぎをしといてくれ。ナスル、東側から来た奴らに職を斡旋しておけ。どうしてもあぶれるやつはミイニャが集めて駐屯地に、そこから先はセリアに一任する。ディックは俺と残りの作業だ。家探しから治安維持までやること盛りだくさんだぞ」


「「了解!」」


こっちもこっちでかなり雑な命令だが、彼らが期待通りに働いてくれることは知っている。なんだかんだ甘えてる分は、いつかちゃんとした形で返してやらないとな…


「ディック、『白鷺しらさぎ』と『黒烏くろう』の幹部を招集、街の調査をしよう」


「了解っす」


   *   *   *


「ジュエニ王国軍第十一特殊大隊将軍、ファウスト=ナイトホーク、到着いたしました」


「うむ…確認した。これからはどうぞよろしく、オータム州知事兼シビリティア市市長のスギョウ=ナタネだ」


スギョウ…王都にいて聞いた噂は、その勇猛さと尊大さばかりを主としたものが多かったが、実際に見てみると礼儀正しく、大柄だが柔和な印象を受けるな。


ここは元々一つの国で、三十年前にジュエニが平定してからは、名前をそのままに独自の発展を遂げた都市である。当然のことながら反国感情剥き出しの都市な訳だが、こうして歓迎されている以上は、表立って攻撃してくることもないだろう。


前任があの人だしな。


「我々にしてほしいことがあれば、可能な限り協力しよう。あんたは前のやつよりは話が通じそうだ。シビリティアは良い関係を築くことを願っている。よろしくな、旦那」


「いえいえ、こちらこそ」


短いながらも挨拶を済ませ、固く握手を交わし、その場からは失礼した。


改めて振り返ってみると、庁舎はどこか荘厳で、他の州と比べてもやはり異質さを感じる。元が異世界人である俺はまだしも、故郷を離れながら異国のようなこの地に赴任された部下たちには、本当に申し訳なく思う。


「なあディック、どう思うよ、この街(シビリティア)


「街としては、やっぱり城塞っぽさがある感じっすかね。入り組んだ道や異国風の砦、丁字路が多いのも気になるっす。大将的には?」


「そういう観点で言うなら、街の区画として貧富の差で分けるんじゃなく、職業ごとに分けられてるのは良いよな。長屋が多いのも気になる」


「ながや…?」


「ああ、いくつかの世帯を一つの長い建物にまとめる方式だ。俺の知ってるものとは、材質っつー点で違うけどな」


「木製だったら火事の処理が大変そうっすね」


まさにそうだよ。


「ははっ、それもそうだな」


二人で談笑していると、前から白髪の少女、浅黒い青年が歩いてきた。


「お初にお目にかかります。官位は少佐、この街の自警団として活動させていただいておりました。『深山しんざんおおかみ』団長、ヘイゴと申します」


青年は立ち止まり、深い礼とともに簡潔な自己紹介を済ませた。


「将軍、ファウスト=ナイトホークだ。よろしく」


「たいしょー!この子すごく頑張ってたの。ちゃんと褒めてあげるの」


クラン『白鷺』リーダーの少女、二トンも言葉を重ねる。


その発言でヘイゴくん萎縮しちゃってるだろが。空気を読め。


「あと、おじさんにも会ったの。仕事を済ませたから帰るって言ってたの。二トンたちも早く帰るの!」


「ああ、仕事は終わったからな。ひとまず基地に向かうか」


元々遊軍の集まりであるこの冒険者たちをまとめるのは、簡単なことではなかった。


一日目の段階で全員揃うわけじゃないにも関わらず、すでに雑務が多い。ろくな引き継ぎもなかったようで、王国軍の全てから嫌われているという錯覚を起こしかけた。


…というか間違いなくのけものにされている。部下も責任も立場もなければ、俺は勇者だぞ!と叫んでやりたい気分だ。あーもうあのジジイの顔面に一発拳を…


「おにーさんこれ、資料室の三つ目の棚に」


「はい、わかりました」


入れてやりたいけどまあ無理だね。忙しすぎる。


自分だけ根を上げるのも情けない。あの二トンですら協力して仕事をしているのだ。俺も頑張らねば。


   *   *   *


シビリティアよりさらに南の地。


管制塔のような建物の最上階で、窓の外を眺める大男と、その後ろに立つ初老の男。


「ザンギバルは…帰ったか、そうか。ならとっとと滅ぼそう。あいつのいないオータムなど、刃のないナイフのようなものだ」


「畏まりました。して、規模はどのくらいで」


「一万…いや、カンロも出そう。二万だ」


「御意」

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