25 生誕祭②
俺は、キャスティという女性の話を聞いていた。
「聖装飾っていうのはな、とんでもない力を秘めた秘宝だ。詳しくは知らんが、全く新しい魔法に目覚めたり、常人ならざる身体機能が身についたりするらしい。そしてそいつは、人を選ぶ。そして、選ばれた人がそれに触れると契約完了となり、過去の記憶は消えるらしい」
いわゆるチート武器ってことね。んで、記憶が消えるってのは転生のことかな?俺も勇者も、元の人格の記憶はないし。
まあでもわかったことは、勇者、あいつは確実にチート持ちだってことだ。羨ましい。
「そんで今現在、アグアーツは先進国十カ国で管理することとしている。裏を返せば、勇者という兵器を所持した大国が、互いに睨みを利かしているとも言えるな。この制度は世界各国で国際法として締結されてるぞ」
つまり、勇者レベルのチートが世界にあと九人もいて、そいつらの全てが異世界転生者である可能性が高い、と。
…あれ?
「なあ先生、勇者ってどうやって選ばれるんですか?」
「ん?そんなことが知りたいのかい。聞いた話だと、勇者に欠けができると、その勇者の近親者に法具から報せが届くんだ。そして報せと同時に、次の勇者候補がわかるらしい。言ってて変だとは思うが、所在地や名前など、勇者候補を探せるような情報が頭の中に流れ込んでくるんだとか。だから、貴族のみから選ばれる…みたいなことは無いんだ」
「なるほど…」
「…話がだいぶ逸れちゃったけど、生誕祭っていうのはだな、初代の勇者が誕生した日のことだ」
溜めといてずいぶんとあっさりした説明ですこと。
「しかもその勇者が最初に言ったことがまた面白くてな…」
その後はまた先生の宗教史が始まり、俺の膝の上ですっかり寝てしまったマフィと話を聴き続けた。
* * *
「お兄さん、冒険者なんだって?」
「頼むからさ、少しだけ話、聞かせてくれよ」
冒険者『ライノ』は、二人の子供に囲まれていた。片方は一際大きく、もう片方は一際幼い。
「おいキール!ここはいつから託児所になったんだ!?」
「まあまあ落ち着けや。そして大人しくそいつらの相手をしやがれ」
酒を片手に、ぶっきらぼうな返事をする旧友。今日のこれに誘ってきたのもあいつだ。
「ああクソッ。わかったよ…おいガキども、お前らの質問に可能な限りなんでも答えてやろう」
「やった!んーとねぇ、武器!使ってる武器は何?」
おお、このくらいの少年なら聞いてきそうな内容だな。
「俺はレンジャーだ。つまり、武器を使って敵を殺すんじゃない。人を守るために力を振るうんだ!」
「よくわかんない」
「わかりやすく言ってよー」
ぐう…ガキを侮っていた…
「まあ要するに、俺の武器は盾だ。人を守るためのな。災害のときも戦争のときも、人を助けるために動く、人々の盾になるんだ」
「…へー」
「なんとなくわかった…ような?わからないような?」
うん、ガキはガキだ。わからなくてもよい。
「みんなを守る正義のヒーローなんだってよ。わかったか」
「おお!すげえ!わかったぞ!」
「すごい!ニース兄!」
…モウボクワカラナイヨ。
「ところで冒険者だって?なにさ軍隊のやつが、こんな貧民街にいるんだ?」
ようやくまともそうなガキが現れたな。
「そりゃ、そこのキールとかいう男に誘われたからさ。犯罪者を捕縛するだけが軍隊じゃない…というか、そんなん警察の仕事な、あの第一の奴らの。俺たちは自由が売りの冒険者だ」
「へえー。おれ、ますます冒険者に興味湧いたよ。ところで、親父のことも知ってるのか?」
「親父?」
「ああ、ボスの、マイザスのこと」
ははーん。あいつの倅か。なるほど賢いわけだ。
「ああ、あのおっさんね。おっさんには世話になったぜ。そこのヒョロマフラーのダチだってだけで家まで工面してくれた。このガザで俺たち『野原のハイエナ』が活動できんのも、全部そこのおっさんのおかげだ」
「やっぱ、俺の親父もすげえのか…ありがとな。親父の話聞けて、おれ嬉しいよ」
「…おう!そうだ!お前の親父はすげえんだぞ!…どっかのマフラーと違ってな」
「聞こえてんぞゴラァ!」
「聞こえるように言ったんだよ馬鹿野郎!」
賑やかな会場が、さらなる笑いに包まれた。
設定回その2。




