23 揺らぐ視界
学ランを着た子供が、俯きながら歩いていた。どんな怠惰な生活を送ってきたのだろう、中学生ほどにしか見えないのに、いやに太っている。クラスに一人はこういう奴もいる。少なくとも創作の中ではそうだ。
おっと、別の子供たちが近づいてきている。・・・うん、まあ、そりゃそうだよ。予想に違わず、怯えた様子のデブを三人ほどの少年たちが取り囲み、恐喝・・・している様に見える。
あーあ。そんなに怯えてるから、何もできていないじゃないか。俺だったら師匠に教わった拳がある。ガキの三人くらい黙らせることもできるさ。そうじゃなくても、ほんの少し勇気を出すだけで・・・いや、興醒めだ。こんなのありふれた日常でしかない。もう帰ろう。
・・・帰る?どこにだ?ここはどこだ?俺の家は・・・あそこの角を突き当たった、三階建ての雑居ビルの様な、二階建て木造アパートの、棒と布切れでできた壁の・・家?
「おう、クソガキ。こんなところでそんなもん持ってお散歩か?」
「悪いことは言わねえ。とっととコーラ買ってきな」
「俺はファンタだ。腰抜かしてんのか?だっせえな」
誰だこの三人組は・・・目に傷のある男?いつもガムを噛んでいたチンピラ?ぼろ切れを纏ったヤンキー?
「黙ってねえでさっさと、寄越せっ!」
「ガハッ」
殴られた。鼻血が出ている。なんで?僕、悪いことしてない。そんなに睨まないで。何読んだっていいじゃないか!理不尽だ。こっちに来ても俺は暴力に晒されるのか。
「なあ、こ・・・、鳩尾ってどこにあるか知ってるか?」
腹部に拳が突き刺さる。体が宙に浮く。意識が消える・・・
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俺はその夜、明かりもないコンクリート造りの部屋で起きた。隣では、椅子に座った師匠が寝息を立てていた。
そういえば、嫌な夢を見た気がする。ここはブルぺスタ、であってるよな?
「いっづ・・・」
体を起こそうとすると、全身に激痛が走る。
「んお、アズー、起きたか」
さっきの唸り声で起きたのか。
「ゆっくりしてな。お前の体は頑丈にしたが、明日の朝までは動くなよ。元医者としての忠告だ」
「ああ、その、ごめん」
「いいんだよ、謝んな。負けて当然だ。まだほんのちょっとしか修行してないぜ」
「・・・たしかに、そうだな」
「わかったらもう寝ろ。今はお前の体だ」
「そうするよ」
そうして俺はまた、眠りについた。
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アズー、こいつはまたきちんと予想通りに負けてくれた。決して物覚えがいい方じゃないが、粘り強く何かに取り組む姿勢は、とてもいいことだ。
都会の裕福なガキはこうはいかないし、かといって貧困層は心まで貧しい奴もなかなかいる。つくづく、俺は弟子に恵まれたと思うよ。しかも、聞けば他の奴らも教えがいのある心の成長した子供らしい。さすがにマイザスさんの子供、ってだけじゃないとは思うがな。
あのガキは、失うには惜しい。しかし、こいつには是非とも外の世界で学んでもらう。
・・・その前に、ひさびさに妹に会わせてやるか。そろそろ生誕祭の時期だな。
彼が目を覚ましたのは、ガザのブルぺスタで間違いありません。ボコボコにされた後はジゼルに回収され、陰ながら見守っていたキールによってガザまで運ばれました。




