19 教わること、教えること
あけおめです。
この作品は俺の受験と共に終わらせる予定なので、三月から新編書きます。
今年もよろしくです。
追記:終わりません、私はこの作品が好きなので。
「なあ師匠、大学ってどうやったらいけるんだ?」
いつからここにあったかわからないような本を読んでいるマフラー男——今はしていない——に声をかけてみた。
「お、アズーもとうとう外の学問に触れたくなったか!」
「まあな。とりあえず、この歳の子供が入るような学校についてから教えてくれ」
「態度はお前の何十倍も幼いような奴が入る学校から教えてやろう。なに、実年齢は何故か変わらんぜ」
「…多分俺の年齢は10歳ぐらいだ。よろしく」
少し考えてしまったが、悩むことでもないし、あの三人と同じ歳であると決めたばっかだ。もっともあいつらも自分たちの正確な年齢なんてわからないんだが。
「今はクルデュアリだろ?10歳となると、この国ではもうすぐ幼稚部が終わるな。つぎのアリミュアリ、春月から初等部だ。んで、こいつが2年制だから、十一になれば中等校に、十四になれば高等学校、いわゆる大学に進むことは可能だ」
「飛び級は?」
「あるさ。言うと思ったからな、二年間で中等校の卒業認定試験を通れるくらいには教え込んでやるから覚悟しとけ」
「望むところだ。ちなみに、他の国はどうなんだ?」
「へえ。教え子の視野が広くて、おじさん感動」
「いいから」
わざとらしく感動した素振りをする師匠に、煙たそうに手を振る弟子。
「はいよ。この方式は、最初にこれを広めた大国『オルバーニ』の名前をとって、オルバ方式なんて呼ばれたりする。もうほとんどの国が採用していて、高等学校が無いくらいの小国くらいが別の方式になってるくらいだ。んで、卒業資格は全国共通だ。『世界連合』の下部組織『世界教育機関』が保証しているからな、加盟国外でも使えるんだぜ」
万能すぎて鳥肌。どんだけこの世界の教育が進歩してるか見ものだな。あと国際協調高まりすぎてて、この世界逆に心配になる。
「んで、お前はどこに行きたいんだ?ジュエニ国立高校なら、世界的な順位では真ん中あたりだな」
「私立は?」
「私立なら、ちゃんと選ばないと水準はバラバラだ」
「ピンキリってことか」
「ピン…?まあそんな感じだ」
あ、こういう言葉は異世界にはないか。
「魔法学の権威であるような大学は?」
「この国だけで見るなら期待はできん。海外に行くしかねえな。例えば、オルバーニの『メコン大学』、チュンメンの『チータオ魔道学院』、タミルの『ゴア大学』は、魔道三天なんて呼ばれてたりする」
「魔道三天、いい響きだな。そこに行きたい」
「深く考えてんのかなんも考えてないのかわかんねえな」
露骨に呆れる師匠を無視し、話を続ける。
「ただ、たしかチュンメン民主国はアーシャ大陸にあるから…距離的にはゴアかメコンしかないかな」
「なんで距離で決めてんだ。若いんだから、どこへだって行けるさ。お前は二年後、ここを出て学びに行け。その素質がある」
「…ああ、そうだな。そうするさ」
実際、あいつらとも完全に会えなくなるわけじゃない。通信ができる魔導具もあるらしいからな。
「そうと決まれば、早速卒業認定試験に向けて勉強するか。教科と要点だけ説明するから、わかんないとこがあれば聞いてくれ」
「了解した」
「よし、じゃあまずここは…」
そうして、今日の授業がまた始まった。
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俺の弟子はアズーという。こいつは、賢い。あの七人の誰よりも。
いや、ただ賢いだけならよかった。こいつは、異常に賢い。一体誰に、このスラムの親無しの貧しいガキが、ここまで賢いと想像できるだろうか。そういった疑問を抱くに容易い存在だ。
また、そう思われている事実も分かっているらしい。その上でこの異常さを俺の前だけは遺憾なく発揮してやがる。俺も努めて自然体で接してるが、気分はもう中等校、いや、高等学校で生徒を教えてた頃そのまんまだ。
それとは別に魔道への探究心も厚く、打てば響くような応答が心地よい。そこに年齢の差など微塵も感じなかった。その会話はまさに、教授と講師による対面のような、立場も年齢も関係ない、魔道への探究心だけが占めるような、ただひたすらに神秘的な時間であった。
ぜひとも、こいつとの出会いとこの濃密な時間は書き起こしておきたい。そしてその先も、こいつの成長を見届けたいものだ。
「お前、やっぱり異常だな」
「あ?なんか言ったか?」
「なんでもねえよ。それよりここ、間違えてるぞ。魔道文字の綴りはこの世界において必須事項だ。頭に叩き込んどけ」
「うわ、ガチじゃん。クソが」
ついでにこいつから発せられる、何語かわからんこれも記録しておこう。




