18 熱い話をする時、男が揃った時
修行のようなものを初めて約一週間が経った頃か、さすがにみんなこの生活に順応してきた。マフィやリンは基本的に遊んでるようなことが多かったが俺たち男子組は、基礎的な体力強化から始めていた。もっとも、アズーには座学のようなことが多かったりと、各々内容にちょっとした違いはあるんだが。当の俺はと言うと、個人的なものは特になく、強いて言うなら現在の世界情勢などを教えられることが多いくらいだ。
むしろ為になるのは、親父の仕事を隣で見ることかな。自分の中にこういうことに対する憧れが大いにあることを感じてる。
走りながら考え事をしていると、開始地点から自分に並走する仲間の足音が聞こえた。
そういえば、今日の走り込みがアズーと同じ時間だったな。
「なあ、アズー」
「どうしたニース」
「俺、ここに残って親父の跡を、ここ『ブルぺスタ』をまとめる頭領になりたいんだ」
「へえ、いいじゃねえか」
「怒らないのか?俺がお前たちに話した夢と、全然違うことを言ってるんだぞ」
「別に、約束されたわけじゃないしな。みんなだって、いろんな夢を持ってるの、知ってるか?」
「知らなかったな。だとしたら少し申し訳ない気持ちになるな」
「どうしてだ?」
「俺があのとき、お前たちの夢を考えず、冒険者になる夢を押し付けたことさ。あれを信じ続けてくれているなら、それはお前たちを今まで縛っていたことにならないか?」
「そんなことないぞ。あのときはみんな、自分の意思で冒険家を志望したんだ」
「…なんか、ありがとな」
「気にすんな」
自分についてきてくれた仲間に気を遣わせたこと、重く受け止めなくてはいけないな。
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興味を持ったので、軽くレイとジミーにも色々聞いてみることにした。
ジミーは玄関から出たところの階段で休憩していた。
「なあジミー」
十分なスペースを確認し、隣に座る。
「どうした相棒」
「お前、将来の夢ってあるか?」
「うーむ…聞き返すようで申し訳ないが、お前のはどうなんだ?」
「俺か?俺は…この組織を継ぐことだ」
「へへっ、そうか。お前らしいな」
「お前らしい?どういうことだ?」
「いや、これは俺の直感でしかなかったんだが、今確定したな。お前は将来、マイザスさんみたいになると思ってたんだよ。多分俺以外の奴らもそう思ってるさ」
「…そうか、なるほどな」
「あ、だから、俺の将来の夢は、お前の側近としてお前を守ることだ。いつか俺も、ジョンさんみたいになるんだ」
「ははっ、お前ならなれるさ。いつだって俺の後ろにいるのはお前じゃなくちゃな!」
「頼ってくれて嬉しいぜ、相棒!」
そう言って二人は、前を向いたまま拳だけを突き合わせた。
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レイにはなかなか会えなかったので、親父に相談して会うことにした。
「ニース!久々だな、一週間ぶりくらいか?」
「まあ大体そんなもんだ。かなり近い建物にいるはずなのに、なかなか一緒になれないもんだな」
「ふふ、全くその通りだ。変な話だがな」
俺たちは今、最初に襲撃した場所の隣にあった少し高い建物の中にいる。ここの建物はレイとティト、妹組二人の居場所となっていて、ティトにはよく外で会ったりしていた。
「あ、そうそう、本題だ。お前、将来の夢ってあるか?」
「うーん、俺は今のところ軍人になる予定だ」
「軍人?」
「そうだ。正確には、お前には悪いが冒険者じゃない方、一から十のどこかかな」
この国の軍隊は、第一大隊から第十一大隊に分けられている。第十一大隊は、将軍として勇者が据えられ、それを筆頭に活動する遊軍だ。治安の悪さが問題になったりもしたが、今の将軍がしっかりと治めているようで、現在は国力の一角として認められつつある。
「というと、ハウゼン将軍のところか?それか、ドミヌス将軍?」
「いや、俺はザンギバル将軍の第三がいい」
「おお、てことはレイも、前線で活躍する将校になるんだな!今からでも楽しみだ!」
「応援ありがとよ、ニース。簡単じゃないかもしれないけど…頑張るよ!」
「ああ!頑張れ!俺に限らず、みんながお前の味方だ!忘れるなよ!」
その後も自分たちの国のヒーローについて、二人は熱く意見を交わし合った。