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始まりの町ベルルにて  作者: 鼻村鼻太郎
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04 メルとコルネ


「自己紹介がまだだったな、俺はコルネ。ヒューマンだ。べルルに向かっている。お前もべルルに?」



 少女は暑さと疲れでまとまらない思考を何とか整理して、自分の命を救ってくれた怪しげな風貌をした男に自己紹介をした。


「助けてくれてありがとうございました、私はメルと言います。私もべルルへと向かう途中です。あと私、デミヒューマンでは無くハーフなので……」


「なるほど、ハーフか。逃げてきたのか?」



 メルはコルネの質問に返答しなかった。



 メルは魔導書を今度は丁寧にリュックに入れ直すと、肩に背負い直し、コルネに向かって一礼して再びべルルへと続く街道を歩き始める。


 その様子にコルネはそれ以上、少女が何者かを追求しようとはしなかった。なぜならその理由をコルネはよく知っているからだ。



 デミヒューマンやそのハーフは、人間から避けられ迫害されている。



 彼らは魔物と呼ばれ、人々から忌み嫌われてきた。


 それは今からおよそ千年前に、人間が彼らを束ねる魔王を討伐しようとしたから。


 いや、その前から続く人間と魔物との偏見の果てに生まれた、憎しみによる弊害だった。



 五分ほど街道を歩き続けると、いよいよベルルの姿が明らかになってきた。


 メルは安堵した表情で町の入り口を見つめる。

 

 しかし後ろには怪しげな風貌をしたコルネと名乗る男が、付かず離れずの距離を保ったまま歩いていた。


 メルは何だかコルネの方が気になってしまい、度々横目で後ろの様子をチラチラと見てしまう。しかしコルネはそんなメルの様子を気にもせず、無表情でメルの後ろを黙々と歩いていた。



 化け物を追い払った後、コルネは心配だからとメルと一緒にべルルまでついて行く事にしていた。


 いくらさっき会ったばかりの赤の他人とはいえ、子供が一人で、危ない道を歩いていくのを黙って見ている訳にはいかないからと。



「あの……」



 我慢出来ずにメルは立ち止まって振り返り、コルネに向かって話しかけた。


 何だか居心地が悪いというか、命を助けてくれた恩人には間違い無いのだけれど、無言で黙々と背後を歩かれていると気が休まらないと思ったからだ。


「良ければ教えて欲しいんですけど、コルネさんでしたっけ。どうして、森の中にいたんですか? それに、何であの……ベヒモスの糞を持っていたんですか?」


 メルの質問にコルネは無表情で、淡々と答えた。


「暑いからな、森の中を歩く方が涼しくていい。長い間一人であちこち旅をしているから、ああいう連中の対処の仕方をよく知っているというだけだ」


「それであの……」


 メルは何か言いづらそうにコルネから目を逸らし、口籠った。


 その様子にコルネは『どうした?』と声を掛ける。


 コルネに促され、メルは渋々といった表情で言いにくそうに答える。


「コルネさんはどうしてベルルに? 言いたくなければ結構ですけど」


 その質問に、コルネはしばらく何かを考えるように間を空けてから答えた。


「ある人間を探していてな。それで一人で旅をしていたんだが、べルルにその人物がいるという噂を聞いたんで、久しぶりにここにやってきたんだ」


「前にもべルルに来たことがあるんですか?」


「ああ……ずっと昔に一度だけ」



 二人は再び無言になった。


 夏の太陽が照り付ける中、またあの化け物が現れるのではないかと警戒しながらべルルに向かって歩いて行く。


 しばらく歩き続けると、べルルと街道を繋ぐ大きな門が固く閉ざされているのが見えた。


 門の近くまで歩いて行き、声を掛けると門番が現れ扉を開けてくれた。


 どうやら、街道周辺に獰猛な肉食獣が現れたとの話を聞き、警戒のために扉を閉めていたとの事。



 門番は二人に向かって『襲われたら大変だぞ、隣町にも警告の案内文を飛ばしたんだが見ていないのか?』と言った。



 メルは苦笑いを浮かべながら頷き、コルネは無言でべルルへと繋がる門をくぐる。


 一悶着有りながらも何とかべルルへとたどり着いた二人。コルネは『ここまで来れば安全だな』と言い、メルに別れを告げた。



「一つだけ聞いていいですか? さっき聞きそびれちゃったこと……」



 コルネが歩き出そうとした時、メルが引き止める様に言った。


 コルネは突然の質問に少々驚いた表情をしながらも、メルの方へと向き直り『いいぞ』と答えた。



「どうして、私にそこまで親切にしてくれたんですか?」



 意外な質問にコルネはどう答えたものかと少し考えて、メルに向かって穏やかな口調で言った。


「昔、親しい友人がいた。デミヒューマンでとても優しい心を持った、素敵な女性だった。だから、俺はお前がデミヒューマンとか、人と違うからといって差別はしない」


 思っていた答えとは違ったのか、メルは目を丸くしてコルネの話を聞いていた。


 ただ、コルネの言動に嘘が無いのは口調や表情を見れば明らかで、メルは久しぶりに聞いた他人からの優しい言葉に、少し心が温まるような気がした。



「あの……」



 メルはまた何か言いづらそうにコルネから目を背けて、口籠る。


 その様子にコルネは再び『どうした?』と声を掛ける。

 

「私、この町のことよく分からなくて……コルネさんは一度この町に来たことがあるみたいだし、コルネさんがその、良ければ教えていただけませんか? この町の事」


 メルは精一杯の勇気を振り絞り、生まれて初めて他人を頼った。


 そんなメルの様子に、少し困ったような表情をしたコルネは、しばらく考えてから『行き倒れないように最低限の事は教えてやる』と快諾した。


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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで読んで先が気になる物語でした。 ブックマークさせて頂きました。 楽しみにしています。
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