これから・・・
はふ・・という声がした。
振り返ると、ベルナデット様が上半身を起こしていた。
「おはようございます。」
「おはようございます。ベルナデット様」
こちらを認め、少し微笑んで挨拶してくれる。
おれは、台所に向かいつつ
「一杯飲みますか?」
そう聞いた。
「ええ。頂くわ。」
俺は、コップの中を乾かして、新しい水を酌む。
「はい。どうぞ。」
「ありがとう。」
コップを受け取ると、ベルナデット様はコクリコクリとゆっくり飲んでいく。
少し苦そうな顔をしつつ「はふ」と吐息を零す。
「なかなか、慣れませんね。このお水は。」
「そうは言っても慣れて貰わないと。」
「そう・・・ですね。」
「小まめな水分補給は大事ですよ。」
「ええ・・・それは理解しているのですが・・・その・・食事・・・」
「うん・・・だから飲んでるのですよ。」
「・・・・・はい。」
ベルナデット様の言いたい事は理解している。
既に学校に来てから、5日は経過している。
だから、大分慣れては来たのだろうけど
・・食事に関してだけは、慣れてなさそうだ・・・
§
ぶっちゃけ、食事は多くて一日一回。
夏の働き盛りの時期だって、食料が足りないなら二日に一回なんてのもあり得る。
一番食事が少ない時期は、春だ。
冬に食い尽くして、食料を作り始める春が一番餓死しやすい。
なので、大体の家は、秋にナヴェを植える。
家々によって形は違うが、大体は葉を、それでも飢えるなら根を食べる。
ナヴェは根も大きくなる種があるからだ。
まあ、なので、学院のように一日に二回も食事をしていたベルナデット様としては
食事が足りてない。となるのは当然なのだろう。
とはいえ、食料自体が乏しいのだ。諦めて貰うしかない。
ん?それでお腹は空かないの?って?
当然空く。
けど、その分水を飲む。
しゅわしゅわした、大麦で作った水は、結構飲むと元気に過ごせるんだ。
大体、この水だって大麦の芽が出て食えなくなったのを潰してパンにして
そのパンが硬くなったのをお湯でふやかして寝かして・・・・でできる訳で。
食料の再利用のさらに再利用で大事な大事な食料なのである。
§
「まあ、そういう訳で、パンを食べてるのと一緒な訳ですよ。
形が少々違いますけど。」
そう言いつつ、2杯目をベルナデット様と一緒に酌みつつ話す。
「それは理解しましたが、何故パンなのに麦の芽が浮いているのでしょう?」
ベルナデット様も2杯目を酌もうとしているが、その麦の芽に邪魔され綺麗には酌めず苦戦していた。
「そら、粉にしたら税金かかりますから。ほら、粉挽き税。」
「・・・ああ。確かに。」
「流石に、パンを焼くには竈税というか、竈使用料は払いますよ。
・・・・村組単位でですが。」
「え・・?パンてどの程度の頻度で焼くのですか?」
そう言いつつ、ベルナデット様は怪訝に眉を顰めさせつつも、必死に水を酌もうとしていた。
「大体・・・早いペースだと10日に一回ですかね?
ある意味、村のお祭りですね。1日しか借りられないので村総出でのパン焼きです。
黒パン、大麦芽パン、後、イネを蒸して潰した丸めたのを焼いたりとか
そうそう、最後にすこーしだけ小麦のパンを作るんです。
カチカチにして、ね。
皆次のパン焼きの日の前日まで残しちゃうから。」
「なんか、そう聞くと楽しそうですね。
一度参加してみたいです。
・・・ところで、竈の使用料って幾らくらいなのですか?」
「ああ。うちは比較的安いんですよ。
だから、10日に一回出来るんですが・・・。
えっと、確か・・・銅貨3枚だったかな。」




