領民のつかいみち
「うん。そのためのジャスタン君だ。」
「ほう?」
そういって、マジェンダ卿は俺を見据える。
「この若造が時間を稼いでくれると・・・」
「うん。市民は1個人単位だけど
領民は一戸単位。
それならイケる。」
我ながら良い作戦だ!という顔をしている王太子陛下に対して
ピシリと罅割れたかに固まってしまったマジェンダ卿。
渦中の人なのに発言権すらない、俺とベルナデット様は、ふうと二人でため息をついた。
「まあ、領民は平民以上とは婚姻出来ないからね。
貴族位に戻ったら無かった事になるから一時的措置な訳だけど
今のこの状況ならベストな選択だと思うよ!
なんせ、学院もそのまま通えるからね!」
「し・・・しかし、何処の馬の骨とも分からん奴に任せるというのは・・・
1年以上二人だけにさせるというのは・・」
「お言葉ですが・・・ジャスタンは、トカケのヨハネスの息子です。」
「なに?・・・ああ、あの男か・・・となると、年は12・・・」
じろじろと俺を見た後、王太子陛下に視線を戻したマジェンダ卿は、ふうとため息をついた後
「何かあった場合は、王家に請求すればよいですかな?」
「んじゃ、それで」
じろりと睨み、脅すように唸ったマジェンダ卿のセリフを軽く王太子陛下は流した後、
俺に対してこう火種を落とした。
「やったね。ジャスタン君。何かあっても良いってさ」
坊ちゃんは、そっと胃の辺りに手を置いていた・・・・。
§
「では、早々に書類を作成し、父に伝えておきます。」
「うん。宜しく。」
そう坊ちゃんが言うとすっと居なくなった。
なんか勝手に進んでいくな~とちょっと釈然としない気持ちになっていたけど
話を聞く限り、断ったりしたら一番困るのはベルナデット様のようで。
唯さえ、巻き込まれて大変な思いをしている人を更に苦難な状況にさせたいとは思えなかった。
マジェンダ卿がベルナデット様を連れてこちらに来た。
「すまないが、娘を頼む。」
そう言って胸に手を置き、頭を下げるマジェンダ様。
一度こちらを見入ると、踵を返して王太子陛下の下へ移動した。
取り残されたベルナデット様は頭を下げ、
「ご迷惑ばかりおかけしてごめんなさい。
それでも、頼らせてください。」
とお願いされた。
「不安が大きいでしょうけど
一年の辛抱です。
微力ながら力になります。」
「ありがとうございます。
不束者ですが、宜しくお願いしますね。」
俺がたどたどしく回答すると
ベルナデット様は優しく微笑み、返してくれた。
俺は、この前途多難な冬が早く終わってくれることを
この冬の始まりの時期から祈ることになるとは
とため息と同時に、一寸だけ不謹慎にも役得な状況を楽しんでいた。




