オレニトッテハ
ゆったりとした曲が静かに終わりかけるそのときに
大きな扉がギィとなり、開いた。
そして向こうから青年が3人こちらに入ってきた。
二人は帯剣していて、俺を見て少し警戒しているよう。
扉を開けた人は、灰色の髪に茶色の瞳。
ああ、ロラン様を若くして真面目にしたような感じの人だ。
もう一人の帯剣している人は、灰色の髪に黒色の瞳。
けれどもロラン様に近い少しおどけた感じの人だった。
そして最後の1人はシルバーブロンドに青色の、べナルド様に似た、
それをもう少し大人にしたような・・・
そんな人。
そんな人が俺を見て、片目を瞑ってシーってしていた。
そしてそのまま、衛兵のお姉さんの近くまでいくとフロアの方を覗いていた。
いきなりの闖入者に衛兵のお姉さんも警戒したんだけど
相手を認めるとひぃと声にならない悲鳴をあげていた気がする。
そしてやっぱり、シーってされていた。
『マジェンタ侯爵令嬢ベルナデット』
フロアから誰かを呼ぶ大きな声がした。
ベルナデット様もどうやら今回の夜会に出席されていたらしい。
帯剣している二人の青年は、
1人は扉の傍、一人はシーのお兄さんの傍に立っている。
『オリ・・・き・・し・』
『・・きけ・・・こ・・・・ど・・・』
『・・・けは・・・か・・!』
フロアから怒号のような声が聞こえる。
1人だけではないようで男性の数名の声がする。
その度にシーのお兄さんは、ハラハラしてたり辛そうにしたり、手で目を覆って上を仰ぎ見たりしていた。
『マ・・タこう・・嬢ベ・・デット!きぞ・・・じょ・・きす・・!』
一際大きな声で、ナニカを叩きつけるように叫ぶ声がすると、微かにざわついていたフロアがシーンと静かになった。
一瞬の間が空いたあと、カッカッカッカと歩く音がし、その音も遠くなると、会場が少しずつ・・恐る恐るざわつき戻った。
シーのお兄さんがふうとため息をつくと、左手をふっと横に薙ぐ。
扉にいた人がさっと動いた。
お兄さんの傍にいた人が扉を代わりに開ける。
シーのお兄さんが扉に向かう途中、俺の傍に来て
「明日王城で待ってる。リラ男爵令嬢に頼んである。」
そう言い残して去って行った・・・・。
更に数刻後、怒号と悲鳴が飛び交い、夜会は早期解散となった。
俺を含め給仕していた面子は早く終わったし給金は満額出るしでホクホクだった。
フロア担当の人達は、あの寒い雰囲気からさっさと逃げられてとても喜んでいた。
・・・結構怖かったタイミングもあったらしいけど・・・。
なんにせよ、帰省の支度もしやすくなったし
荷造りの再チェックも出来そうだったので
急いて寮まで戻ると、手紙を持って蒼褪めた顔をしたマリーさんが立っていた。
「た、ただいま」
そう挨拶するとぎぃぎぎぎと音がしそうな感じで首を動かして此方をむいた。
そして
「王城への・・出向命令・・・」
「え?」
「ジャスタン君連れてこいって」
「え?え?」
「馬車・・・・予約してたのキャンセルされてた・・・」
「えー!」




