衛兵さんとお姉さんと
「上層では辻馬車を使ってね。あっちだと乗合馬車はないの。」
「え、馬車を借りるんですか?」
そう衛兵のお姉さん エリーヌさん が教えてくれた。
「借馬車じゃなくて辻馬車ね。
行先まで連れて行ってくれるタイプの馬車だよ。
多分青銅貨1枚か2枚くらいで間に合うと思うよ」
ほうほうと頷きながら、財布の中身と相談する。
うん。大丈夫。
きっと、領主様もこれを想定して多めにいれてくれていたと思う。
「それとね、中層の乗合馬車もね下層と違って、
ちゃんと馬車になるのよ。
少し高いけどねぇ。
上層までは銅貨3枚かな。」
「はあ、じゃあ下層のは?」
「荷台?大人数乗れるけど、運ばれる荷物の気持ちになるのよね。
あと、馬じゃない場合もあるの。ロバとかラバとか」
乗り心地が違うのよとにこにこしながら教えてくる。
そんな話をしていると、どうやら駅に着いたらしい。
まだ、朝が早かったせいか、始発はこれからみたいだった。
「あー。坊主。」
エリーヌさんと俺の後ろから付いてきていた衛兵さんが
話し辛そうに声をかけてきた。
「どうしたんです?」
「あー、ん。坊主の名前はジャスタンで良いんかな。」
教えてもいない名前を呼ばれ、怪訝な顔をしてしまった。
「そうですけど。何故?」
「ん。ヴィヨレ卿がというより、その令嬢かな。
が、一度屋敷に顔を出してほしいと屯所に連絡があってな。」
「ああ。お嬢様がですか。理解しました。」
お嬢様が名指しで呼びつけたのだろう。
きっと明日の件について聞きたいんだろうな。
お嬢様の呼び出しは幼い頃から良くあったことなので
こちらとしてはあっさりと受け入れてしまう。
そんな内情を知らない衛兵さんはすんなり受け入れたのを見て、訝し気な顔をする。
「ん?大丈夫なのか?」
「あ。はい。手紙の送り元と依頼者は、領主様。ヴィヨレ子爵様ですから。
きっと最終確認でもしたいのでしょう。」
「そうか。奴さんは貴族様だからな。なんかあったら相談しろよ。
まあ、大したことは出来ないが。」
心配してくれてるのだろう。
エミリーさんもコクコクと頷いてくれている。
庶民が貴族に呼び出される状況は、大体は無理難題を押し付けられることだ。
それも子供の俺が呼び出される状況なのだから、心配するのはある意味当然なのかもしれない。
俺は安心させたくなり、笑顔で
「大丈夫ですよ。良くあることですし。
それに、お嬢様のお願いなら、いざとなれば断れますから」
そう答えると、衛兵さんとエミリーさんが唖然としていた。
あれ?