帰宅。却って
3人で門までいくと、お父さんが門番の人達と話をしていた。
こちらを認めると軽く手を振りながら近づいてくる。
「今から寮に戻るのか?」
「うん。」
「今なら警備も厳しくなっているようだから
安全だろう。
気を付けて戻るんだぞ。」
「うん。分かった。」
「あ、そうだ。これマリーさんに渡してくれ。」
そういうと、お父さんは手紙を一枚渡してきた。
受け取り、裏を見ると領主様の封印がしてあった。
「うん。渡しておく。
お父さんはこの後どうするの?」
「あー。領主様が終わり次第一緒に戻るよ。」
「そっか。助けに来てくれてありがとう。」
「次は無茶するなよ。」
そういうと、頭にぽんっと手をのせる。
そうして
「迷惑かけるけど、息子を頼むよ。
宜しく。」
と、二人にも声を掛けたのだった。
§
帰り路は、お父さんの言う通り
篝火が煌々と燃えていて
警備の人もいつもより多くいた。
寮への門も何時もより厳重にチェックされ
部屋に辿りつくまでにかなりの時間を要した。
「ただいま。」
ようやく部屋に戻れたのはもう、夜更けだった。
既に寝ているかもしれないので静かに入ると
机に向かって、何かを書いていたマリーさんと目が合った。
マリーさんは、一度目を閉じて一つ息を吐くと
ゆっくり椅子から立ち上がり
「会場で事件があったって。
貴方が攫われたとか聞いていたけど・・・・
無事そうね。
良かったわ。」
そういって、笑顔を向けた。
「ありがとう。マリーさん。
領主様とお父さんに助けてもらったんだ。」
「そう。ヴィヨレ卿とヤン様が・・。
早く知っていたら挨拶に行ったのだけれども・・」
「もう遅いから戻っていると思う。
あ、そうだ。手紙預かってたんだ。
・・・っと。
はい。これ」
「ありがとう。
じゃ、落ち着いて眠れるお茶を淹れるわ。
それを飲んだら、今日は寝た方が良いわよ。
顔色、戻ってないみたいだし。」
「ありがとう。そうする。」
マリーさんは、手紙を受け取るとお茶を淹れにいった。
テーブルに移動し、先程までマリーさんが書いていた書類を見る。
すると、「ほこん」と咳払いが聞こえ
そそくさと、マリーさんが書類を仕舞って行ってしまった。
微かに見えた感じ、あの書類は入領許可の依頼書や滞在許可の依頼書。
そして、それが必要な人間といえば、領民である俺だろう。
領民は移動許可はない。
入領や滞在の許可なく入れば、山賊と同レベルで討伐されても文句は言えない。
通常であれば、双方で話し合いを行い、許可を与えるものだが、
俺が誘拐されたと聞いて、男爵令嬢の名で書類を作ってくれたのだろうか。
対面を気にし、借りを嫌う貴族なはず。
それでも借りを作るような依頼書を用意してくれた事は
気に入られているのだろうと少しうぬぼれたくなった。
マリーさんは、落ち着く香りのするお茶と、幾ばくかの焼き菓子を置いて
自室に戻っていた。
「もう遅いから、早く寝るのよ。」
と言い残して。




