南方の防衛
南に向かう毎に戦闘の悲惨な状況が増していく。
それでも、味方の被害は少なそうで、
きっと防衛線は突破されていないのだろうと望みを持ってしまいたくなる情景だった。
敵の黒ゴブリンは、殆ど食いちぎれていて、
味方は、兵士ばかりで騎士のような立派な装備は見つからない。
落ちている剣も槍も、押並べて血塗られ、刃欠けも起こしていて、
今の持っている農具の方が信頼性が高そうだった。
ただ一点、敵も味方も死因が牙や爪でなく、剣や槍の傷跡だったことが、悲惨さを増す要因なのだろう。
死者の冥福を祈りつつ、南の市場へと向かった。
§
南の市場には、防衛拠点が建設されていた。
瓦礫や建物の破片を積み上げ、一種の砦を築き
南から来る敵の侵入を阻止していた。
前線では、矢と魔術が飛び、楯等で侵入を防いでるようで掛け声や詠唱が聞こえる。
少し後方東にテントが設営されていて
恐らく司令部がそこにあるのだろうと思われた。
南の市場に着いたことで、少し余裕が出てきたようだが
それでも、マリーさんを休める場所に移動させたいので、指令部のあるであろうテントに近づく。
途中で騎士の一人が此方に気付いたようだったので一度立ち止まり、
相手の出方を窺った。
「おい、そこで何をしている!」
「男爵令嬢が北部で襲われたので護衛し、此方へと来ました。」
騎士はちらりとマリーさんを見て、此方に視線を戻した。
「して、貴様は?」
「私と共に学園へ向かうモノですわ。」
「む、従者か。
・・・それならば、申し訳ないが、御令嬢。
ここは前線。危険極まりない場所ですので、後方の避難場所に移動願えませんかな?」
「御同道願えませんの?」
「申し訳ないですが、此処の護衛が任務ですので、ご理解願いたい。」
「わかりましたわ。所で、避難場所は何処でしょう?」
「テントの北にある、旅館が避難箇所となっております。」
騎士さんは少し戻り、東に向かった所にある建物を指してそう答えてくれた。
その建物は、しっかりした造りになっている上に、騎士が外を巡回しているようだ。
少しホッとしているマリーさんとは、真逆に俺は何故か胸騒ぎを隠せないでいる。
あの時の喫茶店。
何故店員は東の厨房へと向かったのか。
・・・武器を抱えて
ゴブリンがいないから?
一つの懸念が、俺の口を開かせた。
多分、何も話さないのが正解なのだろうけど。
「・・・他の防衛線から、連絡来てますか?
特に東側から」




