襲撃
店主や店員の方を見る。
店員は東にある厨房方面に入っていき
店主はカウンターから槍を取り出していた。
改めて窓の外に顔を出して回りを窺う。
南の通路で黒いヒトガタが兵士を組み伏し、食らっていた。
「マリーさん。ゴブリンだ。黒ゴブリンがいる。」
マリーさんに振り返ると、マリーさんはゆっくりお茶を飲んでいた。
微かに手が震えているから、きっと落ち着こうとしているのだと思う。
すると、槍を持った店主がこちらに来て、申し訳なさそうに伝えてきた。
「お客様。申し訳ないですが退店願います。
見たところ良い所の出のようですから、中央に行かれたら良いのではないでしょうか。
今なら、騎士様も多いので、きっと保護して貰えるでしょう。」
高貴なものが傷ついたとしたら、後々何いわれるか分からないから
先に放り出したいのか。
北側はまだ安全みたいだから、
南に向かわせ囮として使いたいのか。
マリーさんと店主の視線が一度同時に東の厨房方面をさす感じから
それのどれでもなく、単純に心配してくれている気がする。
「わかりました。わたくし達は中央へ向かいます。
宜しいわね?ジャスタン君。」
決心したように答えるマリーさんの声に軽く頷く。
「申し訳ありません。」
「いえ。貴方達も武運を祈ります。」
「ま、イザとなれば逃げるのでご安心を。」
そう言ってサムズアップすると、店主は厨房の方へと消えていった。
「それじゃ、我々も行きますか。」
そういって、俺は外への扉を開けた。
南へ道で視認できるのは、
腕が切られている手負いの黒ゴブリンと、兵士を食っている黒ゴブリンが二匹。
まだ、此方に気付いた形跡はない。
「それじゃ、目の前の納戸から武器を拝借してきますが、マリーさんは付いてきます?」
「ううん。外出用とはいえ、ローブだから走れないの。此処で待ってるからいってらっしゃい。」
確かにマリーさんは、薄水色のペティコートの膨らみは薄いとはいえ、動きにくそうなのは事実だ。
道の少し視界を遮れる垣根傍にマリーさんは移動する。
俺はマリーさんに頷くと
納戸まで身を屈ませながら小走りで向かう。
納戸の中は、鍬、ホースミル、バケツなどの農具がある。
ピッチフォークは・・・ないか・・残念。
あ、サイスとシックルがある。
シックルを腰に下げ、サイスを手に取る。
サイスの刃を外しながら、マリーさんの方に向かう。
すると、南側から手負いのゴブリンがマリーさんのいる垣根方面に走ってきていた。
否、兵士を食い終えた2匹のゴブリンが次のターゲットに手負いのゴブリンを狙ったため
擦り付ける為か、ただただ逃げる為か、マリーさんの方に逃げているようだった。
「ちぃ」
俺はサイスの刃を取り付けつつ、マリーさんの方へ走った。




