警鐘
駅内に入ると、中央は兵士や騎士達で騒然としていた。
露店は全て閉まっていて、大通りは閑散としいる。
幾つかの店はそれらに接収されているようで騎士や兵士のみ滞在しており、
一般のお客は入っていないように見えた。
仕方なく、北の場末にある喫茶店に入り
御者さんに居場所を連絡するため、イヴレールに言伝を頼むことにした。
こういう喫茶店や宿、バー等には、数人のイヴレールが居ることが多い。
大体昼間は子供や若い人で、夜は用心棒兼イヴレールをやっているおじさんだ。
イヴレールは、言伝や手紙を相手に渡してくれるのが仕事だ。
頼めば返信を受け取って戻ってきたり、対象の人を(穏便に)連れてきてくれたりもする。
値段は、距離と伝える文章量、地理の明るさ、文盲さに比例する。
これは、手紙の内容を知られないで済む方が有利であるという意味らしい。
こういう相手は個別にお願いしても良いのだけど、店側に仲介を頼むと信用できる相手を宛がってくれる。
まあ、別途信用度に応じた紹介料が掛かるけど。
マリーさんは、飲み物の注文をしつつ、
店に青銅貨1枚を紹介料として渡し、もう1枚をイヴレール用に支払った。
すると、バタンと裏のドアが閉まる音がする。
これで準備が出来た御者さんは此処に辿り着けるだろう。
加えて扉の音が軽い。
きっと、同年代の子だな・・・。
だとしたら、銅貨数枚と当面の食事か。
厨房から直行ったから、もしかしたら厨房要員の売り込みに使うかもしれない。
「ジャスタンくん。はい、どうぞ」
そんな、イヴレールの動向を想像していた俺にマリーさんが
購入した珈琲を持ってきてくれた。
向かい合って座ったマリーさん。
ここから学園まではまだ時間が掛かるのだ。
お尻の状況も鑑みて、暫しの有閑を楽しむことにしよう。
店の出入り口は、道に面しているため西にある。
道に面した席に座っている俺たちにはまだ
昼前なので陽だまりというには光は乏しいが、
微かにポカポカする陽だまりを称えていて、
そのうえで暖かい珈琲を飲むには適した気温だ。
窓の外を見ると、対面は農家だろうか。
納戸に農具が並んでいるのが見える。
今まさに働いているのだろう。扉が開いた状態だった。
「長閑ねぇ」
同じ風景を見ていたようで、
陽だまりと珈琲でほわほわしているマリーさんからそんな感想がポロリと零れた。
確かに駅中央の喧噪と比べれば確かにここは長閑だった。
あっちは、戦争もどき前なのだから当然なのだろうけど・・・
そんな事を考えつつ、もう一口珈琲を含もうとしたそのとき、
ガランガランガランガランと警鐘が鳴り響いた。




