邂逅、強奪
護衛なのだろう、騎士のような人がベルナデット様を隠そうと前に立とうとした。
が、ベルナデット様は、軽く手でそれを遮った。
「大丈夫。御学友ですわ。」
「ごきげんよう。ジャスタン様。」
「こんにちは。ベルナデット様。」
「ジャスタン様は、こちらに御用がおありでしたか?」
「いえ、豪華な馬車が停まっているうえに、
御者さんが不安そうにしていたのでどうしたのかと思いましてね。」
「ああ、それは申し訳ありませんでした。
私は、少々この孤児院に・・・いえ、この孤児院を見たくなりまして。」
孤児院に目線を移し、そう語るベルナデット様は、少し辛そうな表情をうかべていた。
なんと声を掛ければと思ったときに、目線を戻さず続きを語り始める。
問いかけもあったが、こちらに聞きたいのではなく、きっと、自分の中で、整理しているのだろう・・・
「ご存知ですか?
ここは、”王家直営の孤児院”らしいですわ。
昔は、王家が所有していた聖王教会を、何某かの理由で孤児院に改修を行ったそうです。
父と母がこの孤児院・・・いいえ、教会に浅からぬ縁がありましたので
私も見てみたいと。」
「なるほど。それで護衛さんと二人で?」
「道が分からず、小さな子に道案内をお願いしましたわ。」
ああ、あの男の子と女の子がそれなのかな。
そして、それを裏付けるように護衛さんが愚痴をこぼした。
「あの子たちか・・・。お嬢様がお礼を言っても何も言わないし。
お駄賃を渡したら、男の子はイキなり逃げだす。女の子はビクビクしながら帰っていく。
それもお礼もなしにだ・・・親はどう教育しているのか。」
いやまあ、こんなお姫様みたいな人からお礼言われたら、
ドギマギして何も出来ないと思いますよ?うん。
うん?おだちん?
「えっと、お駄賃ってどのていど?」
「ん?子供に対してだから、青銅貨1枚づつだ。」
あ、ヤバい。
「少々失礼。」
そう言い残すと、来た道を走って戻っていく。
徐々に視線が増えていく先に『少女』がいた。
もうすぐ大通に出そうだった。
俺は、少女を蹴り上げて、壁にぶつけた。
コロコロと手元から転げ落ちるコイン。それを踏みつける。
『少女』は何が起きたのか理解できず、
キョロキョロと見渡した後、自分の手に何もない事に気付き、ナニカを探し始めた。
その先に、俺が居た。
怯えた目で俺を見る『少女』に見せつけるように、踏みつけたコインを拾う。
・・・・青銅貨・・・・
「あっ」と声が出た少女を睨み付け「なにか?」と少し低い声で答える。
「ひっ」と小さな悲鳴の後「なんでもないです。」と答えると、大通りへと歩いていった。
過ぎていく少女からは『ひっくひっく』と鳴き声のような音が聞こえてくるが
『少女』に付いていく視線は、既になかった。




