傲慢
学校生活も数週間が過ぎ、多少生活に慣れてきたキノエの月の下旬
この頃、学校内で奇妙な噂が流れていた。
オフェリア様の周辺に、男女問わず人が集っているらしい。
その集まり方が少し異常な感じがするそうだ。
そのうえ、その中にべナルド様がいるとの話だ。
この状況の中、ベルナデット様はどうされているのだろう?
そんな疑問を覚えながら、講堂へと向かう途中で
噂の状況を目の当たりにしたのだった。
オフェリア様の周りを男子達が囲み、興味を持って貰おうと話しかけている。
その男子の中で、一歩引きつつも一際目立っていたのがべナルド様だった。
あの集団に近づくのは避けようと思い、移動しようとしたとき、ふとべナルド様と目が合った。
目で人気のない四阿の方を指したので、一応そちらへと向かった。
べナルド様はゆっくりと集団から外れると、
可能な限り人に気づかれないように此方へと向かうのだった。
見た目上一人で。
「やあ、ジャスタンくん。」
「お久しぶりです。べナルド様」
「確か、オフェリア嬢と知り合いだったね。」
「ええ。入学準備の場でお声かけ頂きました。」
「そうか。彼女の名前は聞けたかい?」
「はい。」
「覚えている?」
「確か・・オフェリア・ゼレンコヴァと。」
「ふむ・・・」
オフェリア様の名前を答えると、べナルド様は少し考え込んでしまった。
そして、少し困った顔をしつつこう語りだした。
「オフェリア嬢の傍にいる者たちは、皆、彼女の情報を憶えていないのだ。
ただ、リア・・・リア・・と。
かく言う私も、初めて彼女と逢ったときのことは、記憶が薄い。
どうも、彼女は不思議な魔術か理術を使用しているらしい。
どうやら本人は自覚がないみたいだが・・・。」
「はあ、自覚がないのですか。」
「うむ。あれほど影響を与える術を使用しているのに
何故か後ろめたさがない。
きっと何かの呪いか誰かに掛けられているのか。
自分の意思とは別で使用してしまっているのか。」
べナルド様は一拍置き、真剣な眼差しを向けて言葉を続けた。
「私は、可能であれば彼女を助けてあげたい。
一度は不覚を取ったが、あれの抵抗はもう出来ている。
それに回りにいる者たちも少しずつ回復できるように動いている。
きっと、私ならなんとか出来るはずだ。」
「それは、きけ「危険なのは理解しているさ。」」
俺の、注意を打ち消すように・・・そして、言いにくそうに言葉を続ける。
「ジャスタンくん。
君は彼女の”ソレ”に対して抵抗出来ているようだ。
だから、頼みがある。
出来るだけ、ベルを彼女から遠ざけて欲しいのだ。」
「べナルド様が護るのはダメなんですか?」
「オフェリア嬢のは無作為に影響を与えている。
弱い影響だけど、重なれば無視出来ないレベルになる。
危険性を鑑みれば、身柄を抑えた方が良いのだろうが・・・・。
そういう手が取れない理由もある。
それが何時発動するか何時まで発動するか分からない点だ。
捕らえた後、一度も発動しないなら、不当な捕獲になるだろう?
だから、誰かが、抵抗する能力を持つ者が確たる物を手に入れる必要があるのだ。」
俺は、ふうとため息に似た一息をつき、肯定の意思を伝えた。
それを見たべナルド様は満足そうに頷き、オフェリア様の元へと行こうとして
「そうだ。オフェリア嬢は、何処の令嬢だったか覚えているか?確か、男爵位だったと記憶しているが」
「ドゥワーヌとか・・・なんとかだったと思います。男爵様で間違いないかと。」
「ドゥワーヌ・・・・?そn」
べナルド様が再度此方に向こうとしたタイミングで、
護衛(と思われる)の人がチラリとこちらを見た。
というより、姿を見せたうえでこちらを見たというべきか。
すかさず、目線を下げて会話してない体を成す。
「時間切れのようだな。これ以上は聞こえてしまうか。
では、そのように。」
「はっ」
最後の言葉だけは、ふつうの音量で会話しお互いに分かれる。
離れていくその周りには、数名の護衛が何時の間にか配置についていたのだった。
さてさて・・・難儀な仕事を押し付けられたものだ。




