授業:魔法学 基礎
最初の一週間は
入学式で席が近くになった2人と一緒に授業に出ていた。
席が近くになるくらいなので、2人は平民だ。
彼らから聞いた話だと
最初に受講した方がいいのは、算術・母国語・お茶・ダンスらしい。
算術と母国語は、領によって多少の誤差があるので
各領で使用できる共通のものを先に取得することを勧められたそうだ。
お茶とダンスは、イベントで必要になるため、なるべく早く受講を勧められたそう。
誰にって?
学園に入っていた平民の先輩達だそうで。
そういう訳で
キの日・・は入学式。だったので飛ばして
カの日・・は母国語の基礎を
スイの日・は算術の基礎を
ゴンの日・はお茶の基礎を
ドの日・・はダンスの基礎を
受講した。
この学園に入学できた人達にとっては、
既にできて当然の内容なので受講者は本当に居なかったけど
確かに領毎に異なるイントネーションや、数字の書き方が異なっていたようで
早めに修正が出来て良かったと思う。
お茶とダンスは・・・うん、頑張ろう。
さて、今日は第二週のキの日だ。
「ジャスタン。今日は何受けるんだ?」
朝、講堂に向かう途中で会ったナタン・ゲランがそう聞いてきた。
彼は、今年入学した3人の平民の一人で、マジェンタ侯爵領に本拠地を構える商家の息子だ。
三代続く老舗らしく、その四代目になるべく勉強しているらしい。
「ん~、今日は魔法学があるからそれかなぁ」
「そっか、俺は商法学があるからそっちいくよ。」
「んん。じゃあ今日は別々だね。」
「だな。マリー=セシールも今日はパートタイムらしいから、3人ともバラバラだな
んじゃ、またな」
そう挨拶をし合って、其々の教室へ向かったのだった。
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「さ、席に着け。魔法基礎学の授業を始めるぞ。」
壮年の先生が教卓に資料をドサドサと載せながら講義の開始を告げる。
生徒のお喋りでさざめいていた講堂が、
先生の登場で静かになり、皆がそちらの方を向いた。
「よし。
では眠くなる座学をやっていくぞ。
基礎学では、魔力を持たない者も受講出来るから実技はないぞ。
さて、この世界には2つの法術がある。
一つは、理術。この世にある様々な理の元、色々な力を使う術だ。
例としては、神官が使う神聖術や精霊士が使う精霊術だな。
もう一つは、魔術。この世の理に縛られず、超常現象を呼び起こす術だ。
とはいえ、何もレーグルがなければ術は成立しない。
そこで一定のレーグルを強制的に成立されたモノを魔法と呼ぶ。
つまり、魔法で成立させた現象を扱うのが魔術という訳だ。」
そう説明しつつ、黒板に
理術 理を用いる術。 例;神聖術、精霊術
魔術 魔法を用いる術 例:四属性魔法、生活魔法。
と記載していく。
「君たちの着ている制服にも、魔術が籠められている。
これらを発動させる為に必要となるのが、魔力だ。」
そういうと、光の玉をフワフワと浮かばせた。
光の玉はゆっくりと、講堂を巡っていく。
「魔術を用いることによって、熱も無く、ただ明るいだけの玉を造ることもできる。
理術ではそうはいかない。火の精霊なら単純に火が出るため、玉にならないし
光の精霊だとしても、熱が発生してしまう。
元来の理では、光には熱を生じる性質があるからね。
そういう理を無視して成立させるのが魔術であり、それを形作るのが魔法だ。」
「そうは言っても、神聖術のような圧倒的な力で治癒したり、
下手すれば死者を蘇生したりできるのは理の中なのか?
という質問もあるだろう。
あれは、神聖、つまり神の理の下で行っているからだ。
要するに、
神聖術の上位は、神にお願いして神の理の下、神が行っている行為であると定義できる。
これは精霊術の上位も同様だ。
天変地異に近い術を精霊術で出来るのは自然の一部である精霊の理だからだろう。」
「では、魔術では行えないのか?答えは『行えない』。
というより、『行う必要はない』と言うべきかな。
地震や地割れを起こして一帯を破壊するくらいなら、土で全てを埋めた方が楽だ。
火事や業火で一帯をジックリ水分飛ばしつつ焼くくらいなら、黒焦げにする火で燃やす方が楽だ。
津波や濁流で一帯を押し流すくらいなら、水の塊で窒息や毒水で殺す方が楽だ。
竜巻や暴風で一帯を吹き飛ばすくらいなら、風の刃や空気の除去で倒す方が楽だ。
つまり、理に縛られない魔術は、それだけで脅威だ。」
先生は、このタイミングで一旦講義を止めた。
ぐるりと生徒達を見渡したうえで、口をまた開く。
「そんな超常現象を可能にする魔術。
そしてそれを成立させるための魔法。
その魔法だが、一番有名魔法 火・水・風・土の四属性魔法は誰が契約しているか知っている人は?」
その問いにパラパラと手が挙がる。
先生はそのうち一人を指した。
「旧都の元首。人神です。
四属性魔法を旧都が契約しているため、
旧都と戦争になった場合には相手は、四属性魔法が使えなくなるという話は有名です。」
指された生徒は、すらすらと回答する。
その回答に満足そうに先生は頷いた。
「そのとおり。
魔法は一度契約されると、契約者しか変更・解約が出来ない。
契約者は次代に受け渡すことは出来るが、
契約者が居なくなった魔法の契約は、変更も解約も出来なくなる。
とはいえ、契約自体は残り続けるので、魔術は使用出来る訳だ。
そして、我が国の貴族の当主は、皆全員契約者である。
契約者であることが貴族に求められる理由の一つだからな。
他にも求められる部分はあるが、それは貴族学の方で学んで貰いたい。」
貴族の人たちには常識だったのだろう。
大多数の生徒は、再確認の意味で頷いていた。
「さて、最後に身近なものの説明を軽くして終わりたいと思う。
君たちの家にもあるであろう、蛇口付きの風呂や薬缶、火のないコンロもそうだな。
あれらは、魔石と呼ばれる宝石に魔術を組み込んだものだ。
そういうものを、魔道具と呼ぶ。
そして、魔道具は魔力で動く。
魔力の持たない者は使えないかというと、そうでもない。
魔力を蓄えた外部装置あるからね。」
先生は、数個のエーテルを生徒達に配っていた。
どういうものか確認するように順に廻すよう指示しながら。
そうして、自分のもとにも回ってくる。
エーテルと呼ばれた外部装置は、長さ3センチ、直径1センチくらいの円柱だった。
小さな金属の円柱で様々な魔道具が動くらしい。
「このエーテルがあれば、様々な魔道具が動く。
エーテルは、学園の売店でも売っているので
魔力切れで魔道具が動かせなくなったとき用に用意しとくのも良いかもしれないな。
で、魔道具をもっと詳しく知りたいものは、魔道具の講義を受けて欲しい。
今日の講義は以上だ。」
そう言って、先生は講堂が出ていった。




