故意は突然に
第二王子からの招待状が届いたのは、指定された日付の12日前。
・・・
手紙は当然領主様が持ってきてくれている。
今日は、予定が詰まっているからと、家の前で何通かの手紙を手渡しされた。
その場で宛先と封蝋を確認していく。
第三王子様からの手紙が2通・・・俺と妹宛かな。
第一王女様からの手紙が1通・・・今回は俺宛らしい。
側妃様からからの手紙が1通・・・お母さん宛みたい。
あれ?知らない人からの手紙が1通。
封蝋は王家のものだが、何時ものとはなんか違う。
はて?誰だろう?と首を傾げていると
領主様も封蝋を確認し始め、げっという顔をした。
宛先は俺のようなので、その場で中身を確認した。
それが件の招待状だった。
即座に、招待状の旨を伝えたうえで領主様に
「行かなきゃだめ?」
と聞いたら
「勘弁してくれ」
と泣かれてしまった。
解せぬ。
「領主様には恩がありますから、登城しますけど。
庶民がノコノコ行っても、入れて貰えないですよね。」
「で、あろうな。一先ず、伯宛の手紙を書く。
この手紙を見せて入城願いなさい。
あとは、グリ伯の指示に従いなさい。」
「グリ伯って、」
俺が逢うの?って聞こうとしたら、領主様はにっこりと笑みをうかべた。
当然、目は笑ってない。
偉い人がタクさん増えてきて怖いんですが・・・。
「ところで、何時、何に招待されたのかな?」
「えっと、お茶会?とかいうのに、あー・・・12日後、間に合うか?」
日数を聞いてピシリと固まる領主様。
まあ、そうだろう。此処から王都まで歩いて大人で8日。
子供の俺だと10日で間に合うかどうかだ。
今から準備して、出発は明日か明後日かな。
等考えていると領主様が、お金の入った袋を渡しながらこう話した。
「馬車は、色々あって貸す事はできん。
すまんな。
だが、出来得る限り間に合うように手配しよう。
まずは、路銀だ。之を持って早速王都に向かって欲しい。
家には儂からも伝えておく。
旅支度は、用意し次第、騎士に持たせて渡せるようにする。
荷物の中に手紙も追加で一通用意する。
関所に着いたらそれを見せなさい。
直ぐに通してくれるはずだ」
「は・・はあ」
「では、頼んだぞ」
そういうと領主様は馬車に乗って去っていった。
どれほど話をしていたのだろうか。
母さんが家から顔をだして、「話は終った?お疲れ様」と。
なので、
「今から王都まで行かなきゃ。行ってきます。」と。
笑顔で返答した。
ちゃんと笑えていただろうか。
母さんは少し困った顔をしつつも、
「気を付けてね。行ってらっしゃい。詳しくは領主様に問い質すわ」
と言って手を振ってくれた。
パタンと扉が閉まる。
家の中から「お父さんケンどこ?ムチも用意してぇ」なんて言う不穏な声はキコエナイ事にして、
俺宛の手紙を仕舞い、
他の手紙は玄関の小箱(留守の時に手紙を入れてもらうために用意していた)に放り込むと
王都へと向かうのだった。