入学準備:身分制度
男性の先生が全体をぐるりと見渡してから説明を始めた。
「さて、若干学園の趣旨にも絡むが
この学園は身分制度が適用される。
他の国では、学園内だと平等の場合があるみたいだが
世の中に出れば身分制度に縛られるのだから、
此処で学べる方が良いとのことで身分が維持される。
とはいえ、まだ未熟な君たちに大人と同様の縛りと罰を与えると
皆不経済で切る羽目になりそうなのでね。
学園的な罰になる。
なのでこの学園内にいるうちに上位貴族との付き合い方を学んで貰いたい。
その取っ掛かりとして、挨拶する順番。名乗りの方法。廊下のすれ違い方等を教える。」
そういうと、座学と先生同士の寸劇を行いつつ、説明していった。
上位の方から話掛けられない限り声掛けしてはいけないこと
名乗りは爵位を下位から、名前は上位から行うこと。
特に名前は上位の方が教えて貰えたらこちらも名乗れるらしい。
爵位がないものは家名、それもない場合は名乗りはないらしい。
家名って結構大事なんだね・・・・。
廊下とかですれ違う場合は、立ち止まり道を空ける。
爵位が2つより上の場合は目線も下げるそうで。
まあ、爵位どころか家名もない俺には、細かい内容はあまり関係ないので少し眠くなる。
家名もないから名乗りは求められたタイミングでだけだし、
家格なんてないから目線は下げてれば良い訳だし。
「今回教えた内容は、初歩的なものでしかない。
特に、この国ノワールは、貴族、平民、庶民と区分けが多い。
そのため、様々な礼儀作法がある。
詳しい内容は礼儀作法:基礎 等の講義を受けて貰えればと思う。」
「最後に、身分制度があることで不安になっているものもいると思うが
ひとつ、200年前にこの学園で起こった事件を話をしたいと思う。」
先生はぐるりと見渡してから話を続けていった。
「当時、王息殿下の一人が権力を笠に着て下級貴族や平民を虐げていた。
王息だからね。生徒会の会長もしていて、取り巻きと一緒にやりたい放題だったみたいだ。
そして、対立が極まったタイミングで一人の平民女性に王息の取り巻きの一人が無礼を行ったことを
切っ掛けに下級貴族の子の一人が立ち上がった。
生徒会を武力制圧し、王息以下、取り巻き全員を寮に軟禁となった。
リーダーとなっていた下級貴族の子が生徒会長となり、
支援していた上位貴族の令嬢たちのサポートを受けて手堅い運営をしたようだ。
軟禁となっていた王息殿下が様々なツテを使って教師に連絡した。
そして、教師達の回答はこうだった。
『身分制度が保証されている学園において、革命やクーデターも有り得ることです。
教師として提言できるのは授業だけは出るように教師が監視役を行うことくらいです。
良かったじゃないですか。まだ学園での出来事で。
これが卒業後だったら、殺されてますよ。
それとも、王息殿下、学園を自辞されますか?』
だった。
後、王息殿下が王子となったとき善政を敷いたそうだ。
そして、『学園の経験と人脈が自分を助けてくれた』と語ったそうだ。
ちなみに、リーダーとなった下級貴族の子は、王息殿下に口説きに口説かれ、
5年後、とうとう根負けして王子妃となったそうだ。
この学園の身分制度はそういう世界だと知って貰いたい。」
男性の先生はそういって、上位貴族への挨拶と会話の方法を〆た。