入学準備号
王都へ旅を終えてから数か月。
学園への準備等を行い
新年を迎えてとうとう12歳となった。
キノエの月の1日目、キの日。
新年最初の日に俺は、入学式前の事前講習を受けるために
此処、神聖学園のホールにいた。
そのおかげで送年祭は参加できなかったけど、
参加してたら日程的に無理だったのでしょうがない。
今年は参加したいな。
この講習は入学する生徒ならだれでも受けられるが
だいたいは、下級貴族以下が受けるそうで、
既にホールには20人程居て何人かは既に席に着いている。
伯爵以上の上位貴族は、既に知っているか自宅で学ぶらしい。
ホールには、長机が横に3台、それが5列
それぞれの長机に椅子が3つ配置されていた。
俺は、出入り口付近の席に着く。
ここなら多分、庶民が座っていても大丈夫だろう・・たぶん。
講習のカリキュラムとしては3点。
・制服の説明と着方
・上位貴族への挨拶と会話の方法
・学園の趣旨と案内
講習が終われば寮の使用も可能となる。
家に戻るのは難しいので、俺はこのまま入寮する予定だ。
因みに入学式は5日後だ。
坊ちゃんに聞いた話だと、
上位貴族だと人も物も搬入に時間がかかるので
既に今日から搬入を開始しているところもあるとのことだった。
・・大変だね・・
その後も、生徒が入ってくる。
私服のせいか皆着ているものは上等な物のようだ。
まあ、当然か。
此処にいる大体の生徒は貴族で
それ以外は金持ちの平民なんだから。
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そうして、大体の席が埋まったころ、ふわりと甘い香りをさせた人が聞いてきた。
「隣、空いているかしら?」
「ええ。空いてますよ。」
どうぞと席を引く。
ありがとうと礼を述べ、彼女は座った。
そして、小声で話かけてきた。
「ドゥワーヌ男爵の娘、オフェリア・ゼレンコヴァです。」
「ジャスタンです。見てのとおり貴族ではないです。
宜しくお願いします。」
ふんわりと微笑む彼女からほのかに香るそれは、
宿屋の時に時折感じる危険な・・・
なので俺は、 の理術を自分向けに使った。
・・・親の爵位はドゥワーヌ。
・・・少し気になったので記憶しておく。
・・・この香りのせいなのかもしれない。
ふう、と息を吐き、改めて彼女を見る。
綺麗なシルバーブロンドのロングボブ
瞳は金と銀のオッドアイで、少し垂れ目。
左目の下に小さな泣き黒子があった。
守ってあげたくなるようなその可憐な容姿を見ると
きっと色々な異性が放っておかないだろうと思わされた。
そして、可愛くピンク色をした唇が微かに動き
俺にこう述べて、ナニカを惑わす三日月になった。
「こちらこそ宜しくね。ジャスタンくん」