ラルゴ
挨拶をして、部屋を出るとロラン様が待っていてくれた。
「お疲れ様。城門まで案内しようと思うけど、どうだい?」
「ありがとうございます。大変助かります。」
この広いお城の中で、一人で放置されたら
真っ直ぐ城門まで辿り着く自信は全くなかったので
有難くお世話になることにした。
「私もご一緒してよろしいでしょうか」
後ろから、ベルナデット様が声をかけてきた。
「レ・・殿下は宜しいのですか?」
「はい。レナルド様はこの後ご公務で忙しくなるとのことですので」
「そうですか・・・」
ちらりとロラン様を見ると、軽く頷いてくれた。
「では、ベルナデット嬢も一緒に行きますか。
良いかな。ジャスタン君」
「はい、是非ご一緒させてください。」
そう返事すると、では行こうと案内をしてくれるのだった。
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暫し沈黙の中で進んでいたが、かなり居心地は悪い。
俺の中で疑問があったので誰に声をかけることなく、吐露してみる。
誰か拾ってくれることを期待して。
「そういえば、殿下の事を王息殿下とお呼びしましたけど
市井・・・庶民では馴染みがないですね。」
すると、ロラン様が拾ってくれた。
「ああ、他国では、大体王家の子は王子・王女だからね。
そっちの呼び名の方が馴染みがあるだろうな。」
「そうですわね・・・。この国では、王子は一つの爵位ですから
王家の子息は王息殿下。王家の令嬢は王嬢殿下と称しますわ」
「うん。ベルナデット嬢の言う通りだ。良く勉強してるね。
末端の貴族の子息・令嬢とかだと、其処を知らない子もいるからね。」
だから、庶民の俺が知らないのは当然だよってことか。
さらにロラン様が話題を繋げてくれる。
「ちなみに、現在誰が王子を名乗れるかは知っているかい?」
「国王陛下と王太子陛下のお二人ですわ」
「正解。王太子は王子じゃないと成れないから、敬称も殿下でなく陛下になる。
この国独特の文化だね。」
「流石ですね。マジェンタ様。己の浅学を恥じ入ります」
「ベルナデットで宜しいですわ。ジャスタン様。
大体の方は、このような細かい点に気を向けないものです。
ジャスタン様の視野の広さと探求心には感嘆致します。」
褒めてるのかな?
否、褒めてないだろうな。
彼女の視点は、俺でなく別の誰かに向けていそうだ。
「あー。いいなー。そしたら僕も、ロランお兄様で。」
「え、ええぇぇ。王城はk「ロランお兄様ね」・・はい。ロランおにいsま。
でも、俺のお父さんより年上ですよね。多分」
「あれ?そうかぁ。うん。お父様もいいな。娘もいいけど息子も欲しかったんだよね。」
「いやいや。俺のお父さんは存命ですから。・・ね?」
「そうかぁ。それは残念だなあ。そしたら・・・」
ロラン様とやいのやいの闘った結果、ロランおじ様で納得して貰えた。
・・・ベルナデット様も含めて・・・ロランおじ様呼びらしい。
途中から飛び火して混乱したベルナデット様を見てにやにやしていたロラン様は
新しいおもちゃを手に入れて楽しんでいる悪戯っ子のようだった。
・・・・ベルナデット様、ごめんなさい。