目的のお茶会ですかい?
ロラン様のときもそうだったけど、
俺の会話の権利は此方に話題を振られてこっちを見てるタイミングになる。
此方会話をするなんて失礼な事を強要されないので精神衛生上も中々安心だ・・・・と思ってた。
お菓子も無くなり、お茶も終わりそうなころ
「そうそう、スヴェンが、うん。僕の弟なんだけどね。その弟が面白いことをし始めたんだ。
平兄さまという人からの献策らしいんだけど。」
と、前置きをしてレナルド様が此方を見てから続けた。
「中層と下層の馬糞を買い取る業者を作ったんだ。
さらに、厩舎に対して馬の届け出をさせたうえで厩舎の馬糞は回収費用を課した。
回収する度にいくらいくらってね。
馬は生きてるからね。
必ず発生するものだ。
全く回収されない厩舎は、馬が居ないものとして届け出を取り消すようにしたらしい。
そのお陰で馬泥棒が出た場合、届け出のない場所に馬が居ればわかるようになった。
そして、買取するようになったので道が綺麗にもなった。
誰だろうね。
こんなの考えたのは。」
誰でしょうねー。
「欠点がない訳でもない。
厩舎は回収費用を下げたいために、売りに行こうとしているものたちに渡しているらしい。
中には馬糞を売ってる厩舎も出てきているそうだ。
また、裏稼業のシノギになっていないかも気にしないといけない。
どう思う?ジャスタン君」
「難しい内容なので、分かりかねますが。
調査は続ける必要はあると思います」
無難というか、明後日の回答をしつつ、事のはじめを思い出した。
今回の相談は、下層の孤児たちの支援。
炊き出しだと小さい子の食事は奪われやすいという話だった。
なら、ワリが合わない、
其処まで旨味がないけど、収入は得られる仕事を作るのが良いだろうと考えた。
当然、同様の内容でもっと稼げる方法もセットで作る。
考えたのはこうだ。
馬糞を業者に持っていけば銅貨が貰える。という子芝居を孤児たちに見せる。
そして、それを仕舞う麻袋や手袋を大量に捨てる。
次の日になれば、馬糞を集めた子達が待っているはずなので
買取して、毎日来られないからと言って売り場を教える。
厩舎についてはお役所仕事なのでそっちに任せる。
それがこなれてくると、頭の良い大きい子供たちは、厩舎に貰いにいくか、小さい子のを奪い始める。
それでも厩舎に行けば貰えて、さらに売れるなら、奪うよりそっちを優先する。
そうなれば、小さい子は道に落ちてる馬糞を拾って売れるようになる。
シノギの話だって、お金になる厩舎ルートが乗っ取られるだけなので
支援したい、小さい子たちは道端の馬糞拾いを続けることができる。
因みに、買取場の中にパン屋が何故か併設している。
何故か・・・。
そのうち馬糞塗れだと困るという苦情が届いて、
水浴びしないと出られないとかになりそうだと聞いている。
「ふむ・・。わからないか」
「レナルド様は、各領内に幼学校を設立したいとお考えなの。
皆が勉学を行えば、国も栄えるしより上の仕事にもつけると。
素晴らしいお考えだと思わない?」
レナルド様が俺の回答を聞いて考え込んでいるタイミングで
ベルナデット様がレナルド様のことを語ってくれた。
「実現すれば素晴らしいことだと存じます。」
「実現すれば・・か。」
俺の回答を聞いて暫し思案の海へと沈むレナルド様。
色々と思う所があるのかもしれないけど、高々一庶民の意見に惑わされないでください。
責任はとれません。
「そういえば、ジャスタン君。
君は、王城の誰かと手紙のやり取りをしているそうだね。
誰としているのかな。」
「はい。確か・・・騎士見習いのスヴェンとメイドのアンネリーエとですね。
同じ田舎者同士なので話が合うのです。」
「騎士見習いとメイド・・・なるほどね。」
レナルド様が目を細めてこちらを見る。
そのあと、ティーカップに目を落とし
「どうやら、お茶も切れたみたいだね。
今日のところはお開きとしよう。」
とお茶会の終了を宣言したのだった。