3.オリビアを食事に誘ってみる。
「いたのなら、早く声をかければ良かったのでは?」
「いや。なんていうか、少し様子見しちちまってさ……」
あの後、俺はオリビアに声をかけた。
すると彼はなんてことない、といった風に接してくる。いまはひとまずダンジョンを抜け出して、街の中をブラブラと歩き回っていた。
あまり表情を変えないオリビアだが、周囲を見回す仕草から察するに興味はあるらしい。彼に少しばかり興味を持った俺は、その様子を眺めていた。
「オリビアは旅人、なんだよな?」
「あぁ、そうだが。それがどうかしたのか?」
ふと、会話がないことに気付いた俺はそう切り出す。
するとオリビアは、淡々と訊き返してきた。
「いや、さ。故郷はどこなのか、って気になってさ」
そして俺は、何気なくそう答える。
その直後だった。
「…………」
「ん、どうしたんだ。オリビア?」
彼が突然に立ち止まり、眉間に皺を寄せたのは。
見れば、拳を握りしめて震わせている。
怒っている、のだろうか……?
「すまん。訊いたら不味かったか……?」
「気にしないでくれ。少し昔を思い出しただけだ」
謝罪すると、オリビアは首を左右に振った。
どういう意味なのだろうか。俺は首を傾げてしまう。
だが、気にするなと言われたのだから、これ以上追及はできなかった。
「……あぁ。そろそろ、昼飯時か」
だから、あえて話題を変える。
俺はオリビアを食事に誘うことにした。
「美味い店知ってんだ。よかったら、奢るぜ?」
「…………ふむ」
提案すると彼は少し考えた後に、小さく頷く。
それを確認して、俺たちは食事をしに向かうのだった。
◆
「ここの肉は絶品でな! それに加えて安いんだ!!」
「そうなのか?」
席について、首を傾げるオリビア。
彼はメニューを見ながら、しばし考え込んでいた。
俺は頼むものを決めていたので、オリビアのことを待つ。すると――。
「…………む」
「ん、どうした?」
「いや、少し気になるメニューが……」
唐突に、彼がそう口ごもった。
どうしたというのか。俺が首を傾げていると、オリビアは珍しく恥ずかしそうな表情を浮かべた。そして、やや上目遣いにこう訊いてくる。
「なんでも、良いんだな?」――と。
俺はそれに首を傾げつつ、頷いた。
すると彼は、あからさまに表情を明るくしてこう言うのだ。
「で、では……!」
メニュー表をこちらに示しながら。
「こ、この『デラックスパフェ』が食べたい!!」――と。