1.旅人――オリビア。
ここから、第1章です。
「決闘……? 俺と、か?」
「あぁ、その通り。いま私は有能な配下を求めている。もし私が勝利したならば、お前には我がパーティーのメンバーになってもらいたい」
「…………はぁ、なるほど?」
なにやら突然に、変なやつに絡まれた。
俺は首を傾げて相手を観察する。
外套を羽織った美青年、といった人物だった。
金の髪に蒼い瞳。特徴的な長い耳を見るに、エルフなのだろう。中性的で整った顔立ちをしており、男の俺でさえドキッとしてしまうほどだった。
ちらりと見えた腕は非常に華奢で、まるで少女のそれのよう。
ひとまず俺は、そいつにこう訊ねた。
「決闘するかは置いておいて、とりあえず名前を聞いていいか? ちなみに俺は、アクロだ。アクロ・ヴィーケル。お前は?」
「ふむ。たしかに自己紹介がまだだったな」
俺の言葉に納得したらしい。
彼はやけに綺麗な所作で礼をして、こう名乗った。
「私の名前は、オリビア・エーデルヘイム。しがない旅人だ」――と。
◆
「旅人、ねぇ……?」
宿に戻って、俺はベッドに身を横たえていた。
そして思い出すのはオリビアという、先ほどのエルフのこと。どこか浮世離れした雰囲気を醸し出していた彼のことを考え、しばしの時間が流れていた。
パーティーを組むために、決闘をする。
オリビアはそう言っていた。
「互いの力を確かめるためなのか? いや、それだったらダンジョンに潜ればいい。どうして、わざわざ決闘する必要があるんだ」
俺には、それが引っかかって仕方ない。
彼の行動はあまりに不自然だ。だから少し悩んでしまった。
とりあえず俺も仲間を探していたところなので、申し出を受けることにはしたが。それにしても、違和感が拭えなかった。
「まぁ、明日になったら確認してみよう」
だが、考えていても仕方ないだろう。
これは相手のあること、なのだ。一人で悩んでも意味はない。
「さて、寝よう。おやすみ」
俺はそう結論付けて、誰もいない空間にそう呟いた。
疲れていたのか、意識はあっさり闇の中へ。
◆
夜の街、その公園にて。
オリビアは星空を見上げ、小さくため息をついた。
「なるほど。アクロ・ヴィーケル、か」
そして、口にしたのは先ほどの冒険者の名前。
ダンジョンで見た限り、彼の実力は申し分なかった。そう思ったからこそ、オリビアはアクロに声をかけたのである。
単刀直入に決闘を申し込んだのは、自分でもどうかとは思っていた。それでも彼は、比較的あっさりと了承。数日の後に、街の郊外で手合わせすることになった。
「今回は、どうなるのだろうな」
星に手を伸ばしながらオリビアは、静かにそう口にする。
空気に溶けていく言の葉。
その真意を知るのは、オリビア以外にいなかった。
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