2.勝負師の力。
「ギルド長!? あの冒険者にキングドラゴン討伐を命じたのですか!?」
「ほっほ。なにか、悪いかの?」
「悪いですよ! どう考えても、あの冒険者には荷が重すぎます!!」
アクロが去ったあと、ギルドの職員室ではそんな会話があった。
最初に話を受けて勝負師について調べた女性職員は、年老いた職員――ギルド長に詰め寄っている。なにを考えているのか、と。
しかしギルド長の老人は小さく笑って、目を細めるばかり。
さらには、こう言うのだった。
「心配要らんよ。あの冒険者なら大丈夫だ」
「な、なにを根拠に――!」
女性職員は声を張り上げようとする。
だがそれより先に、ギルド長は静かにこう口にした。
「あの者には、類稀にみる才覚があったからの」
「才、覚……?」
それに思わず勢いを殺され、女性は首を傾げる。
すると、そんな彼女を見て長は笑った。
「ほっほ、信じなさい。勝負師というクラス――その異端の力、いまに分かるだろうよ」
そう言って彼は部屋を出ていった。
残された女性は、握りしめていた勝負師の資料に目を落とす。
そして、こう呟くのだった。
「形勢不利になるほど力を増す、異端のクラス――【勝負師】」
だが、その記録も八十年前のもの。
彼女はギルド長の発言に、半信半疑であった。
◆
――不思議なほどに、身体が軽い。
「……っだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それだけじゃない。
身体中に魔力が満ちていくのが分かった。
振り下ろす剣にそれを通せば、平凡な剣が光り輝く。
「まず、一体目!」
キングドラゴンの首を刎ね飛ばして。
俺は、二体目の魔物へと標的を変更した。
力の源がどこなのか、それはまるで分からない。だけど確かなのは、この賭けに勝算がある、ということだった。
だとすれば、その可能性にすべてを賭けるだけ!
「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
肌がひりつくような感覚。
ギリギリでの命のやり取りが、不思議と心地よいとさえ錯覚した。
二体目のキングドラゴン、その腹部を切り裂いて。血を浴びながら最後の一体へと直進。そして力の限り、その脳天目がけて――。
「はぁっ!!」
剣を、突き立てた――!
直後、断末魔の声が響き渡る。
キングドラゴンは魔素へと還り、その結晶が地に落ちた。
その輝きを見送った俺は、ふっと息をつく。
すると――。
「あ、れ……?」
どうしたのだろうか。
急に、全身から力が抜けていった。
尻餅をついて、ボンヤリと何もない一点を見つめる。
「勝った、んだよな……?」
そして、自分がやったことを確認した。
たしかに俺は、この手でキングドラゴンを屠ったのだ。
信じられない。今までうだつの上がらない、底辺冒険者を続けてきた俺が。超高ランクの魔物を三体も倒したのだ。
「なにが、起きているんだ……?」
分からない。
でも、不思議な達成感があった。
「まぁ、細かいことはいいか」
いまは、この快感に浸るとしよう。
そう考えて、俺は一つ息をつくのだった。
◆
そんなアクロを、遠くから見る者があった。
「へぇ、凄いな。一人でキングドラゴンを三体も……」
フードを被った男性だ。
彼は中年冒険者の戦いを見て、感嘆の声を漏らす。
しかしすぐに、こう口にするのだった。
「ぜひ、私の配下に欲しい力だ」――と。
そうして、その男性は立ち去った。
アクロが彼の存在を知るのは、もう少し後のことである。