1.クラス適性の試験。
頑張るぞー!(執筆を
――時は少しさかのぼって。
「【勝負師】なんてクラス、聞いたこともないぞ……?」
俺はギルドに足を運んでいた。
クラスの変更は、ギルドへの申請が必要。ギルドは登録された冒険者のクラスを一括で管理しており、適宜、それに合わせた仕事を振ってくれるのだ。もっとも、俺みたいな弱小には滅多に特別依頼などこないけどな。
「今日はいかが致しましたか?」
「あのさ、勝負師なんてクラスは本当にあるのか?」
「勝負師、ですか……? 少々お待ちください」
とにもかくにも、相談してみないことには始まらない。
そう思って職員に訊いてみたのだが、首を傾げて奥に引っ込んでしまった。ヤケになってと言ったら言い方が悪いが、一発の賭けとして占い師の言葉を信じてみたのだが……。
「これは、ガセをつかまされたか?」
そんな予感が脳裏をよぎって、苦笑い。
もしそうだとしたら、大人しく帰って今後のことについて考えよう。
そう思って、期待も何もしなくなった時だった。
「勝負師になりたいのかい?」
「え?」
先ほどの職員に代わって、年老いた男性がやってきたのは。
なんというか、仙人と呼ぶのが正しいと思える風貌をしていた。そんな彼は俺を見て、何度か頷く。そしてこう言うのだった。
「勝負師、というのは特別なクラスでの。ギルドの中でも秘匿され、試験を通過した者にのみ授けられるのだよ。どこで知ったかは知らないが……」
そして、こちらに一つの首飾りを差し出してくる。
かなり年季の入ったもので、真ん中には紺碧の宝石がはまっていた。
「それを身に着けて、ダンジョンに潜ると良い。そして――」
男性は、どこか嬉しそうに言うのだ。
「キングドラゴンを、一体討伐してみせなさい?」
◆
「キングドラゴンなんて、そんな馬鹿な話があるかよ」
ひとまず首飾りを受け取って、俺はダンジョンへ。
しかし討伐対象の名前に対して、いまだに震えが止まらなかった。というか、俺ごときの冒険者が単独で挑んではいけない相手だろう。
――キングドラゴン。
その名の通り、ドラゴン種の頂点に君臨する魔物だ。
身の丈は平凡なそれの数十倍あり、あらゆる属性のブレスを駆使する。そんなわけだから、パーティーを組んで討伐に当たるのは必須。
それでなくても、超一流の冒険者がギリギリで敵う相手なのだ。
「逃げるか……? 死にたくないし」
そして間もなく、キングドラゴンの巣食う領域――と呼ばれる場所――に足を踏み入れようとした時だった。俺の足は流れる魔力に竦んでしまう。
よくよく考えれば、こんなの無茶も良いところだ。
俺ごときが、こんなことを――。
「………………」
でも、そこまで考えてから。
俺の頭の中に、ケビンに言われた言葉がよみがえる。
才能の欠片もない。
役立たず――それ以外にも、幾度となく浴びせられた暴言が思い出された。
ここで引き返せば、きっとまた同じ。後ろ指をさされて、惨めな生活が始まってしまう。だとしたら、俺は……。
「あぁ、くそ! こうなったら一か八かだ!!」
俺はそこに至って覚悟を決めた。
上手くいけば、起死回生だといえるだろう。
冒険者になって今年で二十年。なにも成し得なかった人生、一発逆転の賭けぐらいはやってやろうじゃないか。
「よし、それじゃ――ん?」
そう思って、一歩前に踏み出した。
その時だった。
「へ……? うそ、だろ?」
目の前に、三体のキングドラゴンが迫っていたのは。
「どうして、こんな!?」
キングドラゴンは単独行動が基本だ。
そのはずなのに、どうして――。
「でも――」
だが、そこまで考えてから腹を括った。
俺はもう逃げ出すのはやめたのだ。冒険者として死ぬのなら本望。
憧れ続け、二十年の時を重ねたプライドを見せてやる――!
「え……?」
そう決めた。すると――。
「なんだ、これ……?」
首飾りが、突然に輝きを放つ。
その光は俺の身体に、大きな変化をもたらすのだった。