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2話 アイスヴァインとアイントプフ

肉が美味しいので初投稿です

翌朝、変わらず晴天を見せる天気のなか自由騎士と少女は馬に相乗りして街道を進んでいた。


「助かります。近くの街まで相乗りさせて頂いて」


「今更だ。気にしてもしようがない」


最も近い街は馬で半日。

幸いにも自由騎士と少女の行き先は同じだった為、特に問題なく旅路は進んでいる。

街道は安全を保たれているので盗賊や魔物に襲われる事も無い。

精々問題と言えば馬に乗る事に慣れていない少女が腰を痛めないように、座る部分に毛布を挟む程度だった。


街道沿いの中規模の街に到着した。

自由騎士と少女はこの街で別れることになる。

当然だが一旦安全な場所まで護送すればそこから先まで干渉する義理も義務もないからだ。


街の市場が開かれている中央広場まで徒歩で行き、そこで別れを告げた。


「貴公、息災でな。」


「はい!騎士さんもお元気で!」


道中で少女が語っていた仲間が待っているのだそうだ。

話はもっぱら少女が語っていたが、愛想が無いなりにも彼も相槌は打って耳を傾けていたので聞いている。


冒険者として生計を立てているそうだ。

一応自由騎士も路銀を増やす為に登録して偶に仕事を請け負ってはいる。基本的には一人でだが。


「補充品を買い足しても時間が余るな」


馬の手綱を引きながら今夜の宿を目指しつつ言葉が漏れる。

騎士階級向けの宿にチェックインし、旅の必需品を買い足してもまだ夕食と寝るまでには早い。

かといって大層な娯楽があるような規模の街では無いので酒場ぐらいしか行くところは無いようだ。


「酒場にでも行くか」


宿に併設された厩舎に馬を預けて目星をつけた酒場に入った。主要街道沿いなので酒場くらいはまともに整っている。

内部は整った統一感のある品を兼ね備えた調度品が揃えてある酒場だ。

主に裕福な商人や騎士・貴族階級向けの内装になっている。

自由騎士の鎧姿は周囲に比べると少々珍しく視線を集めたが、決して鎧姿が居ない訳では無い。


彼が店内の隅を探していると、目的の人物を見つけたようで静かな足取りでその人物と相席とした。

目的の人物はやや太った商人の様に見える。傍から見れば友人か何かのように見えた。


「やぁ貴公。調子はどうかね」


「久しいな友よ。調子は普通というのが正しいかな?」


騎士がウェイターに注文を頼むと直ぐにワインが届き、二人は歓談を始めた。

表向きは何気ない雑談といつもの品の購入という内容だが、実は二人は友人でも何でもない。

自由騎士はこの王国の少し離れた帝国の密偵であり、商人は情報の収集役。

商人が集め、騎士で運び、大使館や領事館で回収するという諜報網なのだ。


如何にも密偵でございますと言った人間で運ぶより、自由騎士の放浪の形で堂々と運んだ方が遅くはあるが確実である。

大使館や領事館に出入りしても、仕官の口を求めていると言えばよいので簡単だ。


「この店の豚肉料理とアイントプフは当たりだぞ。私の舌が保障しよう」


「それは楽しみだ。今から待ち遠しいな」


ちなみに自由騎士が今言った発言はガチである。

この人物、おいしい食事に関しての情熱は本気なので、様々な郷土料理が食べれるこの仕事に態々就いたほどだ。


情報の受け取りの為に、宿の場所を知らせる作業が終われば後は食事を楽しむ時間だ。

未だ夕食には早いが、昼は簡単に済ませたため彼のお腹はペコペコである。


「アイスヴァインとアイントプフでございます」


ウェイターが運んできた二つの深皿には、それぞれ豚すね肉の煮込みとトマトベースの具沢山スープがある。

早速ナイフとフォークで豚すね肉を解体し口に入れる。

ホロホロとした食感と程よい塩加減のすね肉が口の中で旨いと歓喜の声を上げさせている。

ハーブと塩砂糖で漬けられたすね肉が煮込まれても旨いのはしっかりと味が染み込んでいるからだろう。


「うむ!控えめに言って最高か」


商人は顔を輝かせて食べる騎士を見ながら紅茶と焼き菓子を楽しんでいる。

邪魔をするのも無粋という奴だろう。


1/3程すね肉を食べた所でアイントプフに取り掛かる自由騎士。

腸詰、豆類、ジャガイモ、人参、玉ねぎ、芽キャベツがトマトとブイヨンベースのスープに混ぜ込んであり、食べ応え抜群である。

これだけで主菜として通じるだろうそれをスプーンで掬い、食べる。


「あぁ・・・良い・・・。」


丁寧に灰汁抜きされたスープは雑味が消えており、具材の多さによるマイナス要素が無い。

朝方からしっかり煮込まれたであろうスープは根菜類から硬さを無くし、簡単に崩れる脆さを与えた。

しかし崩れた先にあるのは旨味だ。

ブイヨンとトマトのベースはスープ単体の美味しさを作り出し、具材にもそれを分け与えている。


騎士はひたすら肉とスープを交互に食し、瞬く間に平らげてしまった。


「・・・満足だ」


「値段に見合った旨さだろう?だから私はこの辺りで商売しているんだ」


語彙力が死に掛けている自由騎士に対して商人が語り掛ける。自分はここの管轄で嬉しいと。


「こういう時、放浪の身が少しばかり口惜しいな」


「それでは私は先に失礼しよう。商品も纏めたい所だ」


商人がウェイターを呼び会計を済ませ出ていく。


「また後で」


ある程度食べる事で落ち着いた騎士もまた店を出ることにした。

少し歩けば宿での夕食にちょうどいい時間だろう。

宿の食事は何だったのか聞き忘れていた自由騎士。

わからないならそれも楽しみとして酒場を後にした。

今季お勧めのアニメありゅ?

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