運命に抗え
「体が軽くなったよ。ありがとう。」
苦しまないよう一瞬で殺した山賊たちの死体を横目に<嘘を生む物>、人と呼ぶにはあまりにも禍々しく、魔物と呼ぶにはあまりに人っぽいその生物に向けて一歩踏み出す。
「あなたを殺して、この国を変えてみせるよ。お母さん?」
「死を迎えた哀れな物よ。そなたに偽りの命を.....」
フェイトの言葉を無視し、両手を広げ呪文を唱えて何かをしようとしているのを阻止する。「まずい」と本能で感じ取り。そして、それから首に向けて剣で切りかかりつつ、背後では、召喚魔法と生成魔法で攻撃を繰り出す。が、”何か”に防がれる。
「なっ.....」
しかし、こんなところで諦めるわけにはいかない。そこで必死に考える。何もしてこない相手にただ攻撃を叩き込みながら。そして、王が言っていたことを思い出す。「<嘘を生む物>は偽物を従える」それならば、攻撃が何かに防がれるのは仕方のないかもしれない。
だったら、一度死ねば偽物ではなくただの死体になるのではないか。しかし、その死体から放たれる攻撃なら?チャンスは一度しかない。だけどやるしかないのだ。さあ、覚悟を決めて。
「じゃあ.....死のう。」
そして、完全に力尽きるまでに時限式で発動する魔法を組む。一番簡単で使いなれた魔法を.....時限式にして。ほら、簡単でしょ。あと、その直後に王を殺せるようにするのも忘れずに.....
~
「え.....」
二度と目覚めるはずがなかったはずの意識が目覚め、周囲を確認すると首と胴体が別れた死体が新たに2つ増えていた。ただその状況を見てすべて終わったといことの安堵とこの場に自分だけが生きているという虚無感だけがフェイトに残る。
「.....失った物、命が再び蘇ることはない。そのはずなのに、私は生き返った。」
今起こった事実を声に出して確認する。そして、その理由を考える。
偽物は、人を殺すことでレベルが上がるのではなく、人の記憶、魂を吸収することでレベルが上がっているのだとすればどうだろう?また、<嘘を生む物>がその魂を死体に付与し、偽物を生み出しているのだとすれば.....妹を、山賊たちを生き返らせることができるかもしれない。
「試してみよう.....死を迎えた哀れな者よ。そなたに命の輝きを、アン・ファルシュ。」
「「「え.....」」」
急に目覚めたことと、現在の状況に驚く山賊と、その反応に驚くフェイト。
「成功したんだね.....謝っても許してもらえないことはわかってる。だから、謝らないし悪いとも思わない。だた、ありがとう。そして、バイバイ♪」
きっと彼らはこれからも立派に山賊としてやっていくのだろう。これからは、真っ当な生き方をしてほしいものではあるが。
「何を言ってるんですか。ついていきますよ。これから忙しくなるはずですし。」
その元頭の言葉にうんうんと頷く頼もしい部下たち。
「.....全く少しくらい空気を読んでよ。」
今はそんな気分じゃないのに....だって、だってさ、妹は目を冷まさないんだよ。どうしてかな?
「ねぇ.....ミラ。」
今名付けた名前を口にしてみる。妹を守れなかった。死んでしまう運命だった妹を。そんな運命に抗えていなかった。たとえ抗っていたとしても、変えられなかった。
その悔しさを胸に、少女、フェイトは抗い続ける。今度こそ運命を変えられるように
今まで約4か月間ありがとうございました。
次回作も機会があればよろしくお願いします。




