フェイトの過去
無事(?)にその場にいた目撃者たちを排除したフェイトは、妹との再会でき、救うことができたことを素直に嬉しく思っていた。殺した人たちには特に何の感情も抱いていなかった。強いて言えば、よくもまあ妹を売ろうとしてくれたな。ということだけだった。
「それで、ボス。この少女は誰ですか?」
当然の質問である。突然その少女の姿を見た途端助け出し、その場にいた全員を殺してしまったのだから。そしてそれは普段のフェイトが取ることのない行動だったのだから。前半は。
「私の妹だよ。」
「「「あっ、はい。そうですか。」」」
聞いておいてその反応か.....と思うかもしれないが、仕方ないのである。なぜならフェイトが、無言で山賊たちに訴えていたから。『何も聞くな』と。
「お姉ちゃんも奴隷として売られなかったの?私と同じように。」
山賊たちにその質問をされても答えてなかったであろうが、妹の場合は話が違う。とてもかわいい妹なのだ。教えてあげないわけがないだろう?
「売られましたよ。あなたと同じような感じで。」
そして、フェイトは語り出した。その時のことを.....
~
フェイトは処刑場から兵士に連れられ、ある場所に入れられた。その場所はよくわからない。何しろ暗くて周りの様子など全く分からないのだから。
「ここは?」
ここまで連れてきた兵士にそう聞いても
「.....」
何も返ってこなかった。
そして、何日立ったかは分からないが感覚的には、1週間ほどが経ったときだっただろうか、突然周りが明るくなりこんな声が聞こえてきた。
「さあ、今日の目玉商品。偽物ファルシュの少女だよ。レベルは、30。」
処刑をする前にたまに抵抗なく死を迎えようとするものに興味本位で話を聞いていたのだ。話していた側は苦痛でしかなかったと思うが.....それ故か、本能がそう告げていたのかは分からないがその言葉を聞き、外を見て状況を確認した時、悟ったのだ。自分は売られるのだと。奴隷として。
奴隷として働くこと、それは、話を聞いていたためだいたい把握していた。それが死んだ方がよほど楽ということに。しかし、元奴隷たちは言っていた。それでも、死にたくない。それが人間の本能だと。今だからこそ諦めがつくだけで、本当は死にたくないとも。
そして、フェイトは考え、そして諦めたのであった。万全の状態であれば逃げることができたかもしれない。しかし、連れられてからは水もろくに飲んでいなかったのだ。それで逃げようとするのは完全な自殺行為だった。
そして、奴隷になり、そこで人を殺し強くなり、貴族を殺し逃げてきた。
~
ということを全て話した。妹のために。決して山賊のためにではない。
「だから指名手配されてたんすか。」
「まぁ、そういうことだね。」
フェイトはこの話をしながら一つ思い出したことがあった。
「腹ごしらえをしましょう。」
そう、妹ちゃんはほとんど何も食べていないのだ。




