偽物<ファルシュ>の少女
『さあ、今日の目玉商品。偽物の少女だよ。レベルは、30。』
「「「おぉ!!」」」
フェイトたちが町を歩いているとそんな声が聞こえてきた。
「奴隷商売ですか。相変わらずですね、この国は。」
「いや、お前たちも大して変わらないでしょ。」
山賊も基本的にやっていることは同じなのだ。人を殺し、金品を奪う。
「いや、私たちは命を奪ったことはありません。」
「え?」
この山賊たちは、言っている通り金品のみを奪ってきた山賊だった。今までに誰の命も奪ったことがない。また、いつも貴族たちの金持ちを狙っていた。それ故、間接的にも命を奪ったことはないのだ。
「まじか.....」
「まじです。」
フェイトは謎の関心と自分とはまた異なる世界の住人だと感じた。
『この少女は人ではありません。』
ふと、そんな声が聞こえた。
「っ!?」
「どうしました?ボス。」
フェイトは、同じ場所、同じ雰囲気で同じような言葉を聞いたことがあった。そんなことを思い出し、ふと売り物、奴隷の方を見る。
「ボス?」
その少女を見た瞬間その少女の方へ全力で向かう。そして、フェイトの疑惑が確信に変わった。
『おい!!そこのチビ。ここがなんだか知っているのか!!お前も売り物にするぞ!!』
「ねぇ、覚えてる?私だよ?.....」
名前を呼ぼうとして、固まる。その見覚えのある少女には名前などない。過去のフェイトのように。
「お姉ちゃん?」
「そうだよ。」
『こいつの姉と、言ったか?』
そして奴隷商人がある考えに至ったその刹那。すでにその首はつながっていなかった。そのままフェイトは檻を壊し、偽物の少女を連れて......
「よし、ここにいる全員殺そう。」
「え?」
山賊たちにその言葉は聞こえなかったが、遠くから見えたフェイトの笑みで何となく察した。
「「「ご愁傷さまです。」」」




