僕らの知らぬ日常という日々
第1話 [放課後-解放されし我らの時間-]
「……。これは、なんだ。」
アスリートクラスではない特進クラスの中ではかなり珍しいタイプである坊主頭男子 メンバー(現2名在籍)のうちの一人"まっつぁん"が教室のドアを開け唖然としていた。
それもそのはず、教室では激しく人が回転していた。
実行犯いわく"ベイ○レード"らしい。
彼らは二人組になり、一人がもう一人を横向きにお姫様抱っこのように抱えている。そして抱えている方が自分を軸にして激しく回転して、"コマ"となりもう一組のコマとぶつかり合っている。激しさは増すばかりで止まるとこを知らない。すると、
「あっ…。」
見物していたギャラリーからそんな声が漏れた。
激しく振り回されていたコマの足がもう一組の一人の頭に当たったのだ。
「っつ!」
そいつから声にならない悲鳴が上がる。
しばらくして、誰かが彼に声をかけた。保健室いく? と。
「俺は先生になんて説明すれば良いんだよ!?ベイブレードして頭打ちましたってか!?」
「んぐふ! くっ…」
不謹慎さから笑いを堪える僕らの口から奇妙な音が漏れた。
一時間目[入学式の時間]
な…、長い。いつまで喋ってやがるあの校長。
僕の今までの経験と世間からの見解から推測するところ、校長のパターンは主に二つに分けられる。
一つは僕らの心と通じるところを持っていそうな活気溢れる校長。このパターンは非常に僕らに対して都合が良く、楽しげな話や短い話で僕らに自由と笑いを与えてくれる。
しかし、もうひとつのパターンは非常に厄介だ。ドラマのような豊かな人生を幸か不幸か歩んできた彼らは、その人生で授かった有難いお話を、僕らに愛と教育の精神で与えてくださる。
しかし、彼らの立派な精神虚しく、僕らの心に何一つ響くことはない。確かに僕らの人生にとって彼らの話は何か実りを与えるかもしれないが、暇を持て余した僕らにとって、早く話が終わることの方が最優先なのだ。
「…の方に感謝申し上げ、祝辞といたします。荘平高校 校長、岸月 尚樹」