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05話 「そうして彼らの環境は一変する(前編)」

昨日は休んでしまいすいません(´・ω・`)

 「ではとりあえず、無事にキャメロットに戻ってこれたということで」


「「「かんぱーい」」」


 俺の音頭を合図にそれぞれグラスを掲げる。


 途中イノシシモンスターに囲まれていたエルフの女性・クレアを助けるという予想外のイベントに遭遇したものの、俺たち三人はどうにかキャメロット城下街にたどり着くことができた。


 日もすっかり沈み、お腹も空いていたので、クレアの話を聞きがてらディナーにしようと大衆酒場を訪れたのだった。


 ちょうど夕飯時であるのか、酒場の中は予想以上に賑わっていたが、なんとか端っこにあるテーブル席を確保することができた。


 もう少し来るのが遅ければ、おそらく満席だったに違いない。


「あらためてハルカさん、アニーさん。助けていただいて本当にありがとうございました」


 道中何度も御礼の言葉をもらっていたのだが、改めて頭を下げるクレアを見てなんとも真面目なヒトなんだな、と感心させられる。


「もういいって。困った時はお互いさまだしさ」

 

 俺が苦笑しながらそう言うと


「そうだよ。クレア。そんなことばかり言ってると、ごはん冷めちゃうよ」


 とアニーが続けてフォローする。

 明らかにこいつはクレアより年下なのだが、そんなこと気にするアニーではない。

 

「…はい。そうですね。ありがとうございます」


「ほらー、また言ってるー」

「アハハハハ」


 すっかりアニーとクレアは打ち解けたみたいで、楽しそうに談笑している。

 見た目だけならアニーとクレアは10歳くらい年が離れていても不思議ではない。

 もしかしたらクレアのことを姉貴のように思っているのかもしれない。

 

 どうやらアニーの機嫌も直ったみたいで俺はホッとして、料理をつつく。


 初めてこの世界に来たときはどんな料理が出てくるのだろうと期待半分、不安半分であったが、良くも悪くもその期待は裏切られることになったのだ。

 

 正直に言うと、どの料理も元の世界で見たことのあるような料理ばかりなのである。

 その理由は「ハルカになるべく合う世界に転生したんだから当たり前でしょ」とアニーがあっさり教えてくれた。


 そういうことで俺が今食べているこの《焼きフラムフィッシュ》も焼き魚と思って貰っていいだろう。

 ちなみにフラムとはフランス語で炎を意味し、燃えているように赤い見た目からフラムフィッシュと名付けられているのだとか。


 テーブルの食事が半分ほど無くなったところで、俺は本題に入ることにした。


「ところで、クレアはなんでキャメロット城に用があったんだ?」


「そうだよ。エルフの国ってここからかなり遠いんでしょ?」


 とアニーも続く。


 詳しくは分からないのだが、エルフたちが住む国はここキャメロット城を中心とする人間の国からは随分離れた所にあると言う。

 

 キャメロットはこの世界で一番大きな城下街というだけあって、俺たち《人族》の他にも《エルフ》や《獣人族》をたまに見かけることはあるが、わざわざモンスターが出てくる長い距離を生身で移動するというのは一歩間違えれば死に近づいてしまうだろう。


「…………。それは言えません」


 長い沈黙のあと、彼女が口にしたのはそれだけだった。


 和やかだったムードが一変して、俺もアニーも顔を見合わせる。


「これ以上、あなたたちに迷惑をかけるわけにはいきませんから」


 彼女は表情を曇らせ、顔を伏せた。

 そこに可憐な笑顔を浮かべていた彼女の名残はない。

 

 それだけで彼女が抱えている問題が簡単なことでは無いのは明白だった。

 

 とっさにかける言葉も思いつかず、腕を組んで考えているとこの沈黙を壊したのはアニーだった。


「あのさ。別に言いたくなかったら言わなくてもいいし、私たちも聞かない。でもあんな軽装備でもここまで来るなんてよほどのことなんでしょ? 私たちはまだレベルも高くないし、頼りにならないかもしれないけど、クレアが困ってるならなにか力になりたい」


 あのいつもテキトーで少しめんどくさがり屋のアニーが、真面目な顔して話をしていることに驚いてしまったが、それだけアニーのことをよく思っているのだろう。


「それは俺も同じだ。もし力になれることがあったら言ってくれないかクレア」


「ハルカさん……」


 俺たちの言葉にクレアはなにかを考えているようだ。


 再び沈黙が流れるが、俺もアニーもクレアの言葉を静かに待つ。

 ここで残っている料理に箸をつけるほど、空気の読めない俺ではない。


 もし何か特別な事情があるのなら無理には聞かない、いや聞けないし、言いたくないのなら深追いするつもりもない。

 

 ただ、アニーが言った通り、彼女一人でここまで来るというのはよほどのことなはずだ。

 もし彼女が危険なことに巻き込まれたりするのなら、俺たちは力を貸してあげたい。


 今度沈黙を破ったのはアニーだった。


「…どうして、お二人はそこまでしてくださるのですか?」


 彼女の問いに俺たちは思わず顔を見合わせる。

 

 しかしその問いに対する答えはすぐに出た。


「そんなの決まってるじゃないか。友達だろ」


 彼女は不意を突かれたように、きょとんとしている。


「友達……ですか?」


「え? もしかしてそう思ってるの俺たちだけ・・・・・・?」


「い、いえ、そんなことは…」


「一緒に戦って、一緒にここまで来て、一緒にこうやってごはん食べてるんだからさ、友達でしょ」


 アニーのまっすぐな、純粋な言葉を聞いて、クレアは突如――


「フフフ。そう、そうですね。アニーさんの言うことは正しい。あなたたちは立派な友人です」


 笑いながらそう言った。再び綺麗な笑顔を咲かせながら。


「では、私がここに来た理由を『友達』であるあなたたちを見込んでお話します。…でも。もし、この話を聞いて危険だと判断したら私を放ってくれてかまいません」


「大丈夫だよ! ここまで聞いといて、私もお兄ちゃんもそんなことするわけないじゃん」


「そうだよ。さあ話してくれクレア」


 そう言いながらも。

 

 これからクレアから聞く話が、俺とアニーのこれからの環境をガラッと変えることになるとは思いもしていなかったのだった―――。


クレアの抱える問題とは何なのでしょうか。

美人に何か秘密があるのは当然と言えば当然なのかもしれません。

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