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第八話 お人好し



町を出て一週間。

俺たちは小川で焚き火を焚いて休憩していた。

昼食は保存食用の黒パンと野菜のスープだったが、虫に比べたらまだマシなのでお世辞でも美味いとは言えないが充分だった。


「今頃ギルドは大騒ぎだろうな」

「そうですね。どうでも良いですが」

「はははっ違いねぇ。次の村まではまだあるのか?」

「あと三日といったところでしょうか。急ぎますか?」

「いや、今のペースでも十分早いだろうからのんびり行くとしよう」

「承知しました。……どうかしたの、ビィド?」


何かを感じ取ったのか、それまで横になって寝ていたビィドが頭を上げてピクピクと仕切りに耳を動かしている。

俺たちも耳を澄ませてビィドが見ている方角を見るが、流石に獣には勝てないので緩やかな風と小川を流れる音しか聞こえない。


不思議に思いながらも一応警戒し続けていると枝を踏みならすような小さな音が小川を挟んだ反対の森のある方から近づいてくる。

それも一つ、二つではない。少なくとも五つ以上の音が届いてくる。

ノフィティスも感じ取ったのか手には弓を握り、鏃にはたっぷりと毒が付与されていた。

俺も武器を取り立ち上がって警戒しているが、相手は気づいていないのか何か喋りながら無警戒でやってくるのがわかる。


念のため俺たちは背後の雑木林の方へと下り、食事の中には麻痺毒を入れて下がる。

しばらく様子を見ていると森の方から現れたのは子供くらいの背丈をした全身が緑色をした小鬼。ゴブリンだった。

嘆きの森では見たことがなかったが、流石はファンタジー要素。

ちょっと感動したが、実際見てみると気持ち悪いの一言に尽きるな。

きっとピ○コロなんかもいたらあんな感じで気持ち悪いに違いない。


森から出てきたゴブリンの群れはそれぞれ特徴があって棍棒を持つものもいれば探求者から奪ったものなのかボロボロの片手剣や弓。中には鉈なんかも持ってる奴がいた。

そいつらは鼻をヒクヒクと鳴らし、俺たちがいた焚き火の方をみると周囲を警戒するように周りを見ていると。


「チッ」


っと小さな舌打ちが聞こえ見ると背後にいたノフィティスが怪訝そうな顔をしてゴブリンを睨みつけていた。

俺は小さな声でどうしたのか尋ねる。


「ご主人様。奴らはゴブリンという人型の魔物で、数十匹の群れになると小さな村や集落を襲い、皆殺しにしたり若い娘を攫っていく下劣な連中です」

「若い娘を……?まさか」

「はい。奴らは同族以外とまぐわい苗床に出来ます」


聞かなきゃ良かった。

マジで?エロ同人ネタには欠かせない話ではあったけど、マジで?

うっわぁ〜……ちょっと想像しちゃったじゃん。最悪。


「ご主人様。奴らは殺しても良いですよね?」

「……ダメだ。ただ殺すのだけは許さん。嬲り殺すぞ」

「承知しました」


あのゴブリン共が女性をレイプした事があるかはどうでも良い。仮になかったとしても人間にとって害悪であるなら殺すべきだ。


会話を終えた後も少し観察していると、周辺警戒をはやくも解いたのか。一匹のゴブリンが食事のあった野菜スープに口を付けると残りのゴブリンも食事に群がっていく。


どうやら雑食のようで、人が食べるものも食べれるらしい。

鍋に残ったスープも取り合いながら綺麗に耐えらげていた。

俺たちは食事を終えたのを見計らうと林から出てゴブリン共の前へと現れる。


「◇*○****?!」

「**◇○▽**!!」


よくわからない言語で叫びゴブリンは生意気にも陣形を整えているが、ビィドの姿を見るとガクガクと震え出して好戦的だな表情から一気に青ざめていく。


「ガウッ!」

「**○▽!**○▽!」

「◇○▽ッ!」


ビィドが一度吠えるとゴブリン共は一気に逃げ出そうと走り出すが、先頭を走っていたゴブリンから順番に倒れていく。

当然だ。俺が食事に混ぜた毒は遅延性の麻痺毒で成人男性でも最低でも三日は動けなくなるくらいのものだ。

ちなみに俺たちにとっては辛口カレーのビリビリする感じのスパイスが足された程度でしかない。


俺はそいつらを吊るしあげようとする前にノフィティスが先に動いて、わざわざ先頭にいるゴブリンまでいくと蹴り飛ばして仰向けに寝かせる。

ゴブリンは悲痛な叫びを上げているが、そんなことは御構い無しにノフィティスはゴブリンの股座を踏みつけるとゆっくりと体重をかけてやがてパァンッと膨らませた紙袋を破裂させるような音が響き渡った。


「……あ、え?」


余りの行動に俺の方が一瞬思考を停止して目の前の光景を信じられずにいると、のたうち回るゴブリンの四肢を折り砕いていく。

その光景を見ていたゴブリンは涙目になりながらも逃げようと動かせない体を必死にばたつかせているが、その場から一センチたりとも移動していない。

ノフィティスさんは薄っすらと笑みを浮かべながらそんなゴブリン達を一匹。また一匹と時間をかけて玉と四肢を折り砕いていった。


「貴様ら矮小な屑どもはこの世に生を受けた時から間違っています。苦痛にまみれながら死になさい」


そう言って小一時間ほどかけて嬲っていくと最後にノフィティスは最早虫の生き状態のゴブリンに一滴ずつ小瓶から取り出した毒を飲ませていく。

小瓶には使い分けしやすいように色が塗られている。

黄色なら麻痺・赤なら出血・青なら昏睡といった感じで数種類の小瓶に分けられているのだが、ノフィティスが取り出したのは黒の小瓶だった。

それは偶然にも出来てしまった細胞を膨張して破裂させ、出血させながらも治癒してしまう毒と回復薬である水魔(ポーション)を掛け合わせた毒だった。


通常の水魔だと受けた傷の細胞を活性化させて傷の治りを急速に加速させてくれる物なのだが、俺が作り出した毒とは何故か相性が非常に良く、通常の水魔では回復出来ない傷でも加速度的に修復し、なおかつゆっくりと細胞を破壊していく筈の毒も倍の速度で破壊していく、正に破壊と再生を繰り返す悪魔のような代物だ。

ちなみにネズミで実験したところ、頭と体を切断した状態であっても細胞さえあればこの現象は続くようで二日ほど破壊と再生を繰り返した後に液状となって骨すら残らず溶けてしまった。


「大変お待たせしました。あれくらいやれば良かったですよね?ご主人様」


ものすっごい良い笑顔で仕事をやり遂げた感満載の表情で報告してくるが、ビィドは恐怖にかられて後ろを向いてガクガク震えちゃってるぞ。

正直俺自身もちょっと気分悪くなってきたけど、ノフィティスが褒めてほめて!と言わんばかりの顔で見つめてくるもんだから顔を背けることすら出来ん。


「……あ、あぁ。ご苦労だったなノフィ」

「はいっ♪」


うん。ノフィティスはやっぱ絶対に怒らせちゃダメな子だな。

心の底から本気でそう思った瞬間だった。


後から何故あんなに怒ってたのかを尋ねたら「女性を孕ませるだけの道具としてる物に情けは必要ないかと」という事だった。


ノフィティスさんマジやべぇっす。







街道を進んでいくとようやく次の村に到着した。

規模こそ小さいながらも中々に活気がある村で通り過ぎていく住民の表情は明るい。

今晩はこの村で泊まる予定なのでビィドは人目のつかない森に待機するよう命じて俺たちは村で宿屋へと足を運んでいった。


守衛さんに紹介してもらった宿屋には他にも探求者が数名いて皆んな一様に一階の酒場で飲食を楽しんでいる。

俺たちも与えられた部屋で荷物を置くと食事を取りに酒場に行く。

時間的にももう日暮れ時のせいか探求者以外にも一日の仕事を終えた人たちが集まって賑わっている。


「あんたらも探求者なのか?」


食事をしていると同業者らしき皮鎧を着込んだ男性がジョッキを片手に相席してきた。

初対面相手にいきなりだとは思ったが、まぁ酒に酔ってるせいか元々の性分なのか随分気軽な奴だな。


「まぁな。そっちのお仲間は放っといていいのか?」

「ははっ皆んなあんたらを見て気になってんだよ。んで、同業者なら挨拶くらいはしとこうと思ってな」


俺は視線を彼の仲間っぽい人たちに向けるとチラチラと視線を受けていたので軽く会釈だけした。


「俺はホルト。チーム『カルデア』のリーダーをしてる」

「なるほどね、俺はナナシだ。チーム……といっても二人しかいないが、『死の風』のリーダーだ」

「二人だけでチームを組んでんのか?!」

「まぁな。その方が気楽で良いんだよ」

「はぁ〜、まぁ知らねぇ奴を引き入れるよりかはその方が良いんだろうが、あんま危ねぇことすんなよな」

「ご忠告どーも。これでも使い魔があと一匹いるからな。そんな危なくもねぇよ」


なんの使い魔かは言わない方が良いだろうな。じゃなきゃここでも大騒ぎになって敵わん。


「ちなみにそっちの獣人の嬢ちゃん……いや、失礼。女性は?」


ホルトの視線がノフィティスに向かうが、その瞳には見下したり蔑んだものは感じられず、純粋に気になるだけのようだ。

なので俺はノフィティスに視線を飛ばして返答を促す。


「ノフィティスです。ご主人様に使えさせて頂いてます」

「ご主人……あんた、まさか奴隷を使って」


先ほどまでの陽気な雰囲気から一変してホルトから怒気を感じる。

へぇ。ちゃんとした奴もいるんだな。

俺はそう思うと左腕に仕込んでいたミニクロを解除して笑みが零れる。


「違います!ご主人様といるのは私の意志です!」


ノフィティスもこの反応には驚いていたようで必死に弁明している。

こういった扱いを受けるのは獣人のノフィティスには余り経験がなかったせいかしどろもどろになってるのが少し可笑しかった。


「そうなのか?なーんだ、俺ぁてっきり何処ぞの糞共と同じ分類かと思ったぜ、いや〜すまん、すまん」

「気にすんな。そういうのには慣れてるからな、それよりそっちの仲間も紹介してくれよ」

「あ、そうだったな悪い。おーいっお前らもこっち来いよ!」


ホルトが仲間を呼ぶとカウンターから席をたって俺たちの近くにあった円卓を並べて座る。男女二:二で見た感じも前衛と後衛に別れたバランスのとれたチームのようだ。


「そっちの男がルドルフでこっちの金髪がアネーシャとその妹のリーシアだ」

「よろしく」

「初めまして」

「よ、よろしくです」


ルドルフはこの中では年長者なのかなかなかの体格だ。盾とか持ってタンカー役をやってそう。

姉のアネーシャは気が強そうな熱血っぽい感じだ。

妹のリーシアは逆に気が弱そうだけど、根性があるって感じで、漫画とかだとけっこー早い段階でs……流石に不謹慎か。

それに現実と比較してるんじゃ俺の頭もお釈迦になりかけてんのかな?はっはっは。


「俺はナナシで、こっちはノフィティス。チーム『死の風』を組んでる」

「よろしくお願いします」


ぺこりと頭を下げるノフィティスに反応はそれぞれだったが、獣人と知っても態度を変えない様子から悪い奴らではないらしい。


「それにしても『カルデア』か……よっぽどそこの二人が大事なんだな、ホルトさん?」

「はぁっ?!」


カルデアはそこらへんにある草花の名前だが、認知度は余り知られていない。というよりも、そんな事を気にかける人がいないので知らないだけなのだが、変わった特徴があって必ず黄色い花を一本の茎から咲かす綺麗な花だ。

この世界の事を知っておこうと植物図鑑を読んでいる時に知ったのだが、その意味は『別れぬ絆』と記されていたのを思い出す。


「はっはっは!早速見破られたなホルトっ!」

「う、うるせぇっ!あんたも何でそんなこと知ってんだよ!?」

「偶々だよ。それと『そんなこと』ではないだろ?」


わざとニヤついた笑みを浮かべてホルトを見ると耳まで真っ赤になって抗議してくる。もちろんノフィティスにもその図鑑は読ませているのでクスクスと笑っているが、姉妹の方はよくわかっていないのか「どうしたの?」とか「何を赤くなってるの?」とか聞く始末である。


「ど、どーでも良いだろう!そ、そんな事よりあんたら王都の方から来たのか?」


随分と無理矢理な話題変更だったが、これ以上イジメたら可哀想なので話に乗ることにした。


「いや、俺たちは……あれ?そういや、あの町なんて言ったっけ?」

「さぁ。そういえば聞きませんでしたね。ここから西の方になの、失礼。十日ほど歩いた町から来ました」

「西の?ひょっとしてフルスト?」

「かもしれません」

「かもって……ギルドのある町の名前は覚えておいた方が良いわよ、結構困ることが多いからね」


アネーシャの発言に確かにこういう会話をするときに困るなと思ってしまう。

地球でも道を訪ねた時にそこがどこかわからなければ、分からないからなと今更ながら思ってしまう。


「そうですね。勉強します」

「そうしなさい。あたしたちはこれから王都へ向かう途中だったの。あなたたちは?」

「コンカッサロンに向かってるところです」


途端にアネーシャの表情が強張った気がしたので俺は補足を入れることにした。


「こいつの友人を探してるんですよ」

「そいつぁ……いや、すまん。だが、当てはあるのかい?」


空気が重くなる。

この世界は人間至上主義であり、獣人への迫害は酷いものだ。

そんな中でノフィティスの集落にいたものをさがすとなると砂漠に落ちたダイヤを探し当てるような物なのでほぼ不可能に近い話なのだが、実際俺の目的の一つに組み込まれているので諦めるつもりもない。


「地道に探していきますよ。何か目的があった方が人間ってがんばれますからね」

「そうかい……なら頑張れよ。お節介かもしれねぇがコンカッサロンに着いたらヴォルゲン商会を頼ってみると良い。

そこはただのアイテムショップなんだが、何度かそこの護衛をしたことがあるから俺たちの名を出せば多少なりとも力にはなってくれるはずだ」

「それは助かります。見返りは」

「気にすんな。獣人への迫害は俺たちの好むところじゃないからな。少しでも頑張って欲しいんだよ」


非常に有難い話ではあるが……なーんか怪しいんだよな。

話してる感じだと偏見はなく善意で言ってくれてる気はするんだが、見返りも求めずにこんな美味しいネタを提供してくれるものなのか?この人間至上主義の国で?


俺は少しの間だけ黙考してから口を開いた。


「あの、非常に嬉しい話ではあるけど。どうして会ったばっかの奴にここまで親切にしてくれるんで?」


ノフィティスも若干気になってたのかおどついた態度になってしまう。

一方カルデアの面々は困ったような感じだ。


「……ハハッ別に裏がある訳じゃねぇよ。ナナシさん、俺たちを見てなんか気付かねぇか?」


ホルトの乾いた笑い声が聞こえて彼らの装備や武器に目をやっていく。

リーダーのホルトは何処にでもあるような鉄製の片手剣に円盾。防具は皮鎧と中にはチェインシャツを着込んでいる。

ルドルフはホルトの円盾よりもふた回り程大きめの盾を持ち武器は片手斧のようで、こちらも皮鎧とチェインシャツを着ている。

アネーシャはレンジャーかシーフのようで斥候職にみえる。武器は弓と短刀のようだ。鉄製の胸当てを付けているが、全体的には動きやすさを重視しているのか軽装の印象を受ける。

妹のリーシアは魔法職のようで杖を携えているくらいで他は特に目立ったものは身につけていない。


全体的のバランスが取た良いパーティに見えるが……ひょっとして一人足りないのか?

通常チームを組む際は五人一組で動くのが基本だ。

前衛が二人と後衛を守る盾役が一人で残り二人が後衛だ。

彼らの装備を見るとホルトは前衛でルドルフは盾役。アネーシャはリーシアを護衛しながら援護する後衛。

つまり前衛が一人足りない事になる。

別段四人でパーティを組むところは珍しくはないが、それだとルドルフの役割が少し不自然だ。偏りがあると言っても良い。


「気付いたみたいだな……そう。俺たちのチームには前衛が一人足りないんだ。カルミラっていう獣人の槍使いがな」

「……」

「……」


四人の表情が暗いものになる。


「一ヶ月くらい前に魔獣討伐のクエストを終えた帰りに野営をしてたら運悪く野盗に遭遇してな……」

「……そいつらはどうした?殺したのか?」

「当然だ。襲ってきた奴らは返り討ちにしてやった。だが、そいつらは有名な山賊で人数も拠点にしてる規模も格が違った」

「なんて奴らだ?」

「『黒蠍盗賊団』って連中でコンカッサロンに向かう途中にある山を拠点にしてると聞くが、奴らはそこら中に野盗を分散させてるから何処にでもいやがる。

あんたらもコンカッサロンに向かうなら気をつけろよ」


ホルトが忠告してくれるが俺はそれに笑みを浮かべて応えると持っていたジョッキを持ち上げた。

それを見て他の面々も意図が分かったのか、各々飲み物が入ったジョッキを上げる。


「未知を求めた探求者カルミラに」

『カルミラに』


その一言できっかけにジョッキに残った葡萄酒を一気に飲み干してそのあとは軽く雑談を交わした後に退室した。





部屋に戻ると装備を外して身軽になるとベッドに倒れこむ。

ノフィティスも同様に同じ場所に身につけていた装備を置くと俺の横に座ってきた。

この部屋にはベットが一つしかない。というのもベッドが二つある部屋が空いてなかったわけでも、元々なかったわけではなく。

ノフィティスがどうせ寝るだけなのだからベッドは一つでも構わないという事からだった。

最近食事もまともな物になってきたので程よく肉付きもよくなってきたせいか、出るとこは出て締まるとこは締まったモデル体型になった年頃の女の子がそれはどうなの?と思ってしまうが、洞穴にいた時からずっと一緒に寝食をともにして来た事もあって今更感もあり別にいいかと流してしまったからだ。


「黒蠍……どう思う?ノフィティス」

「私たちを差し置いて蠍を名乗るなんて烏滸(おこ)がましいにも程があると思います」

「ははっ違いねぇ」


半分人間・獣人をやめたような毒人間・獣人を差し置いて確かに猛毒で知られる蠍を名乗るのは烏滸がましいってもんだな。


蠍の毒は確かに強力だ。流れている血流を凝固させ、細胞を破壊してじわじわと動きを封じてくるのだからな。だがそれだけだ。

そんなもの森にいる生物なら誰しもが持っていたんだからな珍しくもなけらば脅威でもない。


俺はノフィティスの頭を抱き寄せると横に寝かせた。


「情報料の対価と俺たちの専売特許を横領した罪で黒蠍(そいつら)を滅ぼそうか」

「ふふっカルミラさんの仇とは言わないんですね?」

「会った事も話した事もない奴の?そんなわけねぇだろ。そこまでお人好しじゃねぇよ」

「そうですね。お人好しではありませんね」

「……寝るぞ。明日から情報収集もしていくからな」

「ふふっ承知しました。ご主人様」


ーーーーご主人様は『お人好し』ではなく『お人好し過ぎる』方ですからねーーーー。





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