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要請①

 ラドが拠点ホームへやって来て、環境に馴染んできた頃にそれは訪れた。


「旦那様、国王陛下からお手紙が」


 執事バトラーのその言葉に、ベッドでごろごろしていた俺はげんなりとした。


「見なかった事にして破り捨てろ」


「では読み上げます」


「やだやだ、聞きたくなーいー!」


 耳心地のいい美声で読み上げられた内容は大体予想通りだった。

 めんどうだから聞きたくなかったのに、もう。


「まぁ、何処の国も貴族も、異常者イレギュラーを抱き込めても年単位の準備が必要なのは分かるよ、うん。それでこっちに余計な仕事が来る事も分かってましたよはいはい」


「戦乱の世ですか。嘆かわしい限りですな」


「んー、あー。執事バトラーは先の大戦の生き残りだったな」


「はい。……今も、夢に見るのです」


「心の傷ってもんは落ち着いてから顔を出すくそみたいな奴だ。執事バトラー、この拠点ホームに敵は居ない。あまり溜め込んでくれるなよ」


「えぇ、分かっております」


「ならいい。一ヶ月程ここを空ける、留守を頼んだ。下がれ執事バトラー


 短く応えて、執事バトラーは足音を立てずに部屋を辞した。


「……さて」


 トラとエルは稼ぎに出掛けている。少なくとも今日明日に帰ってくる事はない。ラドは好奇心のままに町を散策しているし、連れて行くならこっちだろう。


 長期間拠点ホームから離れるから、町長宅に寄らなければならない。めんどうこの上無いが、これも付き合いだ、我慢しよう。


 常の備えとしての荷物を確かめ、愛用している武器の具合をあらためる。といっても、市販の剣なのだがね。

 前に使って以来、メンテナンスをしていないせいか歪んでいる。後で鍛冶屋に行こう。自分でも出来るが、その時間を他に当てたい。


 適当に戦闘服へと着替える。今は暑い時期だから、インナースーツも夏仕様だ。といっても、袖は手首まで、裾は足首まであって何処が夏仕様なんだよって言いたくなるが、通気性が高く、吸湿性も抜群だ。

 上に服を重ね、変なところに引っ掛からないようベルトで締め付ける。

 剣を腰へ、投擲用の杭は腰のベルトへ、短剣は太股のホルダーへとそれぞれ収めた。

 そういえば、ホルスターの位置で頭に付ける言葉が変わるらしいが、めんどうだから拘らなくてもいいだろう、うん。


 外出の準備は出来た。不足している物は道すがら買い足して行けばいい。出発時にあれこれ用意周到に準備したところで、嵩張るだけでしかない。

 必要なのは着替えをなん着かと、体を清める為の布。そして次の町までの食料に、いざという時の携帯食料。後は野営の備えだ。


 怪我した際の荷物は常の備えとして持っている。

 この間消毒液を消費したから補給しとかないとな。


 馬は二人が使っているだろうし、移動に徒歩は正直しんどい。となると、


「ただいま戻りましたー!」


 考え事をしながら屋敷を歩いていると、ばばーんとラドが帰還を果たした。使用人達が慇懃な挨拶と共に腰を下げている。

 奴隷に対する態度じゃないが、多分俺の奴隷だからとかで扱いに困っているのだろう。もう少しフレンドリーでも構わないのに。


「んんっ!? 主様が見た事ない格好してる!?」


「丁度いい。探す手間が省けた」


 と言って、身長130㎝の俺が両手を広げた程度の幅を持つリュックを片手で投げ渡す。ラドは驚きながらも危なげなくキャッチした。


「お前の分の常の備えと、着替え、食料。そして装備が詰まってて嵩張っている。暇を見つけて身に付けろ」


「え? え?」


「出掛けるぞ」


「え? あの、何処へ?」


 突然有無を言わされず捲し立てられ困惑する彼女に、少し考えて答えを出した。


「旅行」


 ラドは喜んだ。

 ちょっと短め。

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