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プロローグ①

 鬱蒼と生い茂る森林地帯。季節は春から夏へと変わりつつあり、木々の葉は無駄に青々としている。そのお陰で熱い日光を遮っているのだから、感謝すればいいのか、恨めばいいのか……。

 ともあれ、それでもバリバリなインドア派である俺には効果は抜群で、森に入ってからというもの常にグロッキー状態。虎の獣人に背負われて呻きながら項垂れている。


「うへぇ。外なんて滅びればいいのに」


「大将、耳元で物騒な事言わんでくだせぇ」


 呪詛の様な呟きに、虎の獣人が渋い声で応えてくれた。あ、渋いってのは口調的な意味ね。断じて声が渋い訳じゃない。コイツはダンディズムとは無縁の生き物だ。


「うっさい。お前毛深いんだよ、体温高いんだよ。この獣が。汗掻かないんだから適度に冷えた水を飲めよ。体調崩すなよこの野郎」


「相っ変わらず理不尽の中に優しさがあるんだもんなー大将」


「仕方ない。それがマスターの味」


 と、少し後ろで静かに付いて来ているエルフが虎の獣人の呟きにぼそっと応えた。


 虎の獣人は虎としか言えないし、エルフはエルフで金髪碧眼しかいないのかよってぐらい特徴が一種類しかない。つまらん、なんだこの種族共。

 虎の獣人は言うまでもなく巨体だし、エルフはエルフで長身だし、こいつ等身長が130㎝あるかないかの俺に喧嘩売ってんのか? そうなんだな?


 そんな二人だが、共通する特徴と言えば、首に無駄にゴツい首輪をしているところだろう。無骨な首輪は奴隷の証し。その体は物であり、主の所有物である証左だ。


 二人は奴隷である。そして俺が二人の主だ。


「俺の味とかどうでもいいから。んで、まだなんも見えねぇの?」


「それらしい反応は今のところ無し」


「んだよ。大将、ガセネタ掴まされたんじゃねぇの?」


「さーてね。移動に三日だ。突然現れた奴が、突然消えてもおかしくはねぇわな」


「それもそうか」


「ん。油断も慢心もしない」


「たりめぇだバーロー」


 そして、森の住人であるエルフが再び目を閉じる。そんな状態でも問題なくピッタリとくっついて来るのだから、エルフの索敵能力はくそ高い。なんでも、大地に足が付いているなら裏側まで探知出来るとは本人の言だ。尤も、そこまでの技量を身に付けるには千年の時間が必要らしいが、正直オーバースペック過ぎてそこまでは要らない。


 んで、五百年を生きるエルフが未だに見つけられない、と。


「……あ、もしかして空中浮遊でもしてんじゃね?」


「……」「……」


 ふと思い付いて口にすると、二人は静かに顔を見合わせて頭上を見上げる。丁度そのタイミングで森の草花がざわめき始め、突風が吹き荒れた。


 ここが比較的開けた場所だった関係もあるのだろう。奴は木々を遠慮なく薙ぎ倒しながら着地をし、満足げな蜥蜴顔を晒した。そして俺と目が合いパチクリ。寝ようとしてからまた俺を見てパチクリ。


《ぎゃあああぁぁ――――ッ!!??》


 人の顔を見て悲鳴をあげるとは、失礼な奴である。


《なんで居るんすか!? なんで居るんすか!? なんで居るんですかぁあああ!!??》


 情緒不安定な人みたいに奇声を発しながら、明らかな怯えを見せる蜥蜴。高さ三メートルを超え、赤い鱗を持ち、蝙蝠の様な翼を持つそいつは俗に言うドラゴンだ。

 産まれてから半月の奴でも小さな国の一つや二つ簡単に滅ぼせるし、人間でいう大人なドラゴンは一匹で軍事力に優れている大国を泣かせる事が出来る。そんな超生物がドラゴン。カースト天辺に位置するだけあり、その数は少なく、遭遇する確率は死んで異世界に転生する程度のパーセンテージ。

 そう聞くとかなり高い確率に思えるから不思議だ。日本の創作に出てくるドラゴンはドラゴンしてなくて個人的に超不満である。まっ、それはまた別としてだ。


 そんな超生物を前にしては、流石の二人も先程までの余裕が何処かへ消し飛んだらしく、緊張でガッチガチに固まっている。無駄に体に力が入っていて、強張り過ぎているのだ。何事にも対応する用意だろうが、少し構えすぎだ。それじゃあ逆に反応できても対応が遅れてしまう。


 ところで、なんで奴はこんなにも怯えているのだろうか?


「なぁ、どっかで遭ったか? 正直言うと覚えないんだけど」


《覚えてない!? いやまぁ確かにあの時の貴方は今よりも小さかったけど、けどっ! こっちはまだ夢に見るんですよ!? どうしてくれるんですか!》


 今よりも小さな頃というと、あれだな。まだ満足に喋れない時期に実家の謀略で外出時に馬車を襲われて、母さんのお陰でなんとか命からがら生き延びてから町で成功するまでの頃だよな。

 あー、そういえばあの時持ち込んだ素材のお陰で成功出来たんだよなー。なんだっけあれ、確かなんかの尻尾だった気がする。よく覚えてないや。


「あー、悪いんだけどもうちょい詳しく話してくんね? 流石にピンと来ないんだけど」


《なっ!? ならば、これを見なさい!》


 そう言って、ドラゴンは前方に無駄に長い尻尾を置いた。ビッシリと細かい鱗が敷き詰められている、素材価値の高い尻尾だ。先端は膨らんでいて、毒をたんまり含んだ鋭利な棘が生えている。


 ――――あ。


 ピンと来て、思わずドラゴンを指差した。


「あ、あーーっ! お前、あん時のチビドラゴン!?」


《思い出しましたか!? 貴方が私の尻尾を根元から引きちぎるから、再生しきるまでろくに飛べず、群れの仲間からバカにされたんですからね! そのせいで尻尾が生え換わってから私を笑い者にした奴等をぶちのめしたら、こうして追放されちゃったんですよ! どうしてくれるんですか!?》


「じゃあ責任取るからお前俺の奴隷になれ」


《この人無茶苦茶な事言い始めた!?》


 多分、似たような事を思っている奴隷が約二名居ると思う。お前等の事だよ呆れてる獣人間と耳長娘。

 ぷろろーでやる内容じゃないよなー、と思ったけどめんどいのでこのまま投下。見切り発車だしいいよね!

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