《甘装》(ラグセル)
掃除したら魔法使えるって言われて掃除したのに、意味がないって言われた。
――衝撃発言。ったく、俺の三十分を返してくれ……
夕影が悲嘆にくれる中、威勢よく立ちあがったのは、彈野原とユルゲンスだった。
「いまの言葉、聞き捨てならないな!」
「そうだ、一体どういうことか説明してもらおう!」
鬼のような形相の二人を気にする様子もなく、美甘先生は続けた。
「まあ、皆さんにはこの掃除の報酬として、体内のカロリーを《克巧力》に還元出来るアイテム《甘装》(ラグセル)を用意しています! だから、気を落とすことはありません!」
そう言って皆に手渡したのは、なんの変哲もなさそうな指輪だった。見たところ凝った装飾がなされているというわけでもなく、そんな力を持っているような指輪だとは到底思えない。
「ほんとにこんなので、先生みたいに出来るんですか?」
夕影たちは半信半疑でその指輪、《甘装》を装着する。
「みんなしっかりと《甘装》をつけましたか? それでは、これから本題に移りたいと思います!」
美甘先生はそう言いながら、黒板の文字を消した後に、こう書いた。
『開催! 一年エクレア組の《スイーツグランプリ》!』
「さあ、今から愉しい楽しいゲームの始まりです!」
さながら、悪の帝王みたく、そして、まるで今から生死を賭けたデスゲームが始まるかの如く、美甘先生は宣言する。
――だが、夕影は知らなかった。
これから起こることが一体何を意味するのか。そもそも意味のないことなんてなかった。三十分の清掃活動の裏にあった秘められた意図、その裏に隠された真実。これから始まろうとするこのイベントは一種の幕開けにしか過ぎない。
――何もかも甘い。何よりも甘い。
そんな夕影を待ち受けているのは、甘美ではなく酸鼻、純愛ではなく悲哀な物語だった。
真のユイちゃんを決めるデスゲームが始まる!(大嘘)
次回は明日6月2日7時更新です。