掃除は入念に
掃除しないと魔法使えないって言われたから、掃除をする。
『掃除』、確かに美甘先生はそう言った。その言葉を聞き終わる前に大半が雑巾を手にしていた。
「ってあれれれ? 先生まだ掃除しか言ってないんだけど……まず先に自己紹介をしてもらおうと思ったんだけど……まあいいか」
「うおおおおおお!」
「むうううううう!」
ふと辺りを見渡すと、彈野原、ユルゲンスは必死になって床を雑巾がけしていた。尋常じゃないスピードで縦横無尽に不羈奔放に教室中を駆け巡っていた。
「まったく、掃除しないといけないなんてどういうことなの……」
「そうね、入学早々に掃除をさせられるなんて思ってもみなかったわね……」
我舞谷、牧ノ矢は愚痴を言い合いながらも、窓ふきに精を出していた。
「夕影君! 私たちも掃除しよっか!」
天彩は掃除用具入れから箒を二つ抱えて夕影の方までやってきた。見るとその後ろには何かが……
「天彩、後ろ……」
天彩が振り向くとそこには……
「……え? ってぎゃーーー!」
「み、水会 雪凍乃です。よ、よろしくお願いします……」
ひょっこりと顔をのぞかせていたのは、小柄で色白の少女だった。仲間になりたそうな目でこちらを見ている。
「私は天彩心結! よろしくね!」
「夕影惟斗だ! よろしくな!」
天彩と夕影は自己紹介して水会を迎え入れる。水会は二人の態度を見て強張った表情をやめ、相好を崩した。
「そこ! しゃべってないで手を動かす!」
美甘先生が夕影達に向けて注意する。
「そして、無相さんもちゃんと掃除する!」
「そんなことしても本当に意味があるんですか? 意味があるとしたらそれを教えてもらわないと私は……っていたたたた」
「つべこべ言わずに、やるったらやるの!」
無相 有意味、無造作に束ねられた髪に無機質な瞳、それでいて、どこか有識で有為な雰囲気を醸している少女だった。美甘先生にほっぺたをつねられてしぶしぶ席を立ち、箒を手にする。
「さあ、みんなしっかり掃除するのです! 掃除することで教室だけじゃなくってみんなの心も整理整頓して、きれいにしちゃってくださいねー!」
美甘先生は腰に手を当て頑として言い放った。
――そして、夕影たちは約三十分もの間、黙々と教室の清掃活動に従事することとなった……
「はいはーい! このくらいでいいわ! みんな自分の席についてくださーい!
……そして、まあ、気がついていた人もいるかもだけど、
……実は、この掃除にはなんの意味もありません!」
掃除は必要!無意味じゃないよ!
次回は明日6月1日7時更新です。