白馬の王子様
「本当は、スクラップにしてペシャンコなんだったんだけどね。まあ、そうそう上手くはいかないよね。知ってた、知ってた……全く光樂君は何やってんだか……」
――ってか、何やってんのあなた?
未来志向の水萌はここで邪魔が入ることをなんとなく予見し、想定していた。だからこそ、ここで水会を仕留めきれなかったことを悔いることはなかったし、動揺することもなかった。だが、水萌は驚いていた。こんな戦場で突然現れた彼女、もとい彼は何をやっているんだ、と。
単純に呆気にとられてしまったという表現の方が的を射ているのかもしれない。本来はあり得ない、どこのラブコメなんだと、そんなフラグは皆目無かったのではないかと。
「んっ……あっ……」
夕影は水会にキスをする。水会の体は小刻みに震え、水萌は夕影の横顔決まり悪そうに眺めている。
「それは《巴甘》(ペカン)といわれるカロリーの塊よ。ってか脂質の塊ね。私たちが《克巧力》を使いすぎた時に口にすると《克巧力》を回復することができるみたい。美甘先生が一人一つずつってくれたのよ」
夕影は我舞谷がそう言って自分に《巴甘》というエネルギー補給アイテムをくれたのを思い出し、すかさずそれを水会に口移しで与えたのだった。
「頼む、雪凍乃! これでっ!」
夕影が祈るような面持ちで水会を見つめる。すると、苦しそうにしていた水会は少し息を吹き返した。
「夕影さん……ありがとうございます……」
水会は横たわったままの姿勢で軽く会釈した。
「ふーん。白馬の王子様、ピンチの時に現れたヒーロー様ってわけね……分かった、分かった、なんとなく分かっちゃった」
夕影惟斗と水萌ユイラ、物言わぬまま対峙する二人。ようやくこの長かった天上天下ユイちゃんが独尊カップもクライマックスを迎えようとしていた……
次回は7月15日7時更新です☆




