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ユイがいる『お菓子』で『おかし』な日常  作者: 阿礼 泣素
8章 相克! 二人のユイトと二人の水会
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愚図で無能

「おいおい……ちょっと、待てよ……」

 夕影は脇目も振らず駆けだした。



 無数の刃で貫かれた水萌、今度は残像などではない、しっかりと水萌に攻撃が通っていた、思いが通じていた。


「雪凍乃ちゃんが全力だったってことはお姉ちゃん分かったよ。一生懸命、無我夢中、一心不乱に……お姉ちゃんに牙を剥き、抵抗し、反撃した。その攻撃的な姿勢は昔の引っ込み思案の雪凍乃ちゃんからは想像もつかなかったなあ。だから、お姉ちゃんは嬉しいよ。


雪凍乃ちゃんも成長するんだって……


でもさ、やればできる、頑張れば報われる、努力は実る、だとかそういう話ではないよね。頑張っても、努力しても……


――この程度か……ってね」


 水萌は不敵な笑みを浮かべながら水会を一瞥する。


「お姉ちゃん何言って……げほっ……っく」


 水会は胸部を手で抑えつけながら苦しみ悶えた。それもそのはず、水萌が水会に放った攻撃《紫苺毒霧》の効果が今になって表れたからである。


「今を全力で生きろ、だとか今が楽しければ良い、なんて言葉があるけれど、私はそんな言葉たちが大嫌い。だってさ、未来のことを考えないでなにしちゃってるんだってね、思っちゃう。雪凍乃ちゃんは今に全力を賭けちゃったんだよね。なんにも考えずに、なんとも思わずに、なんの疑いも抱くことなく突っ走っちゃったわけだ。用意周到、準備万端、備えあれば憂いなしってね」


 水萌の《紫苺毒霧》は体内の《克巧力》をじわじわと奪う攻撃だった。最初から全力を出し切ったことがすっかり仇となってしまった水会、水会は意識が朦朧とする中で極度に空腹を感じた。


 ハンガーノックという現象がある。肉体がエネルギーを失い、極度の低血糖状態になることで、自らの意志とは関係なく体は動きを停止してしまう。


 水会が陥っているのはまさにこのハンガーノックという現象で、水萌の目の前で全く身動きが取れないでいた。


「じゃあね……ばいばい、愚図で無能な雪凍乃ちゃん……」


 《惨挟酷壁》(ウエハースウォール)


 巨壁が身動きの取れない水会を圧し拉ぐ。その強固で稠密な壁は蟻一匹通さないくらいぴったりと隙間なく固着した。


「本当は、スクラップにしてペシャンコなんだったんだけどね。まあ、そうそう上手くはいかないよね。知ってた、知ってた……全く光樂君は何やってんだか……」


――ってか、何やってんのあなた?



次回は7月14日更新です☆

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