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ユイがいる『お菓子』で『おかし』な日常  作者: 阿礼 泣素
1章 開催! 1年エクレア組のスイーツグランプリ!
4/59

《克巧力》(ラグス)

いろんなユイちゃん、でもみんなユイちゃん。

「私たちもその《魔法》を使えるってのは……ほんとなんですか?」


 天彩がすかさず質問した。


「もちろんです。だけど、この《魔法》にはルールがある……それを今から説明しようと思います」


 クラスはすっかり静まり返っていて美甘先生の説明を聞く準備が整っていた。先ほどまで血気盛んだった者もこの世界での特別な法則があるということを肌で感じ、理解したようだった。


「まずこの力は《克巧力》(ラグス)と言います。この《克巧力》の源は誰もが知っているいわゆるカロリーってやつです……女の子だったら食べるときに気にしちゃうアレね。このユイマイルワールドでは《克巧力》を使って色々なことが出来ます。さっきやったみたいに氷を生成して操ることもできるし……」


 美甘先生はおもむろに手の平を上に向けて囁いた。


「――《灼炎熱風》(レッドフィナンシェ)」


 すると、クラスの中を一瞬にして熱を帯びた勁風が吹き荒れた。


「……こうやって自分の熱量を放出することも出来ます。まあこうやって使い方はさっきも言ったように色々だけど、《克巧力》は有限だから計画的に使うこと!」


「先生が言っていた呪文は必ず言わないといけないんですか?」


 質問したのは牧ノ(まきのや) 弓射流(ゆいる)という少女、冷静な物言いで同い年とは思えないくらい落ち着きをみせている。


「良い質問ね、牧ノ矢さん! 結論から言えばこの呪文は必要です。まあ説明すれば内言を言葉の網を通して外言にして形象を……っていうややこしい説明をしないといけないから今回は省略するけど、とにかく詠唱は必要です」


「……そして何より重要なのは、この《克巧力》には制約があるってことね。さっきの詠唱の話と関わってくるんだけど、この力を使うには《お菓子》をイメージしないといけないの。魔法も万能じゃないってね!」


「お菓子……」


「そう、お菓子。スイーツって言い換えてもいいのかもしれない……みんなが知っているお菓子、何がある?」


「キャンディー!」


 天彩が誰よりも早く答えた。


「キャンディーね。いいわよ……みてなさい!」


 美甘先生は右手を高く掲げ、先ほどとは異なる詠唱を行う。


「――《飴雨弾丸》(キャンディーレイン)」


 唐突に目の前に多数の雨粒が顕現し励起し高速移動したと思ったら、机の端っこを容赦なく削り取っていった。


「すごい威力……」


 呆気にとられている聴衆を気にも留めず、美甘先生はまるでただのエンターテイナーの如くパフォーマンスを続けた。


「――《爆散飴玉》(キャンディーボム)」


 小球が辺りに四散し、その刹那、小球は爆裂する。その衝撃波が教室の隅々まで拡散することで、窓はキシキシと軋み、空気が爆風の影響でビリビリと振動しているのが分かる。


「……と、まあこんな風にキャンディー一つでも使える技は一つじゃないってことね!」


――パチパチパチ……


 教室に自然と拍手が沸き起こるとともに、チュートリアルを終えた主人公のように彈野原とユルゲンスが勢いよく立ち上がる。


「くらえ! 《苦甘漆黒》(グレートチョコレートケーキ)!」


「ゆくぞ! 《脆崩紅閃》(スペシャルショートケーキ)!」


 ほぼ同タイミングで二人は拳を全力で前に突き出し、声高らかに叫ぶ。


――しかし、残念ながら美甘先生のようにはいかなかった……


「な、なぜだ……」


「発動しない!?」


 意気阻喪の二人、そして込み上げてくる羞恥心。


「……ッ!!」


「くっ……!」


 紅潮する二人の頬、その場に居合わせた者もあまりの恥ずかしさに結果的に一緒になって含羞の色を浮かべることになった。


「二人とも、先生の説明を最後まで聞かないからそうなるのよ。まったくあわてんぼうは損するわよ。みてるこっちが恥ずかしいってかんじ……」


「まあ、献身的な二人のおかげで分かったと思うけれど、まだ、あなた達に《克巧力》を使いこなすことは出来ません」


「じゃあ! どうすれば!」


 夕影が無意識に美甘先生に質問していた。


「そうね……手っ取り早いのは……」


――掃除……かな?



魔法少女になってみたいって一度は思いません?


次回は明日5月31日7時更新です。

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