そういえば
――えへへ、話し過ぎましたね。
水会は笑っていたがそれは本心からではないことは明白だった。
「水会、私そんなこととは知らなかった……詮索してすまなかった……」
彈野原は決まり悪そうに水会に対して頭を垂れた。
「いえいえ、こちらこそ変なこと語っちゃってごめんなさい。でも、決戦前に皆に知ってもらえてよかったですよ、私は。だから……練習でちょっぴり厳しかったこともあったかもですが許して下さいね、なんて言ってみたりしちゃいます」
水会は落ち着いた口ぶりでちゃっかり今までの練習の免罪を求めた。
「水会さん……こんな話をしてお涙頂戴しようたって私はっ……私はっ……ぐすん」
そう言って大粒の涙を落としているのは牧ノ矢だった。普段は毒舌なことを言う人ほど情に厚かったりするのだろうかと夕影は思った。
「別に、それを知ったからって水会さんに対する評価が変わることはないわ。明日の舞台で結果さえ残してくれればノープロブレムよ……でも、話してくれてありがとうね」
我舞谷は口ではこう言っていたものの、確実に水会に対する見方が変化したといえるだろう。もちろん、我舞谷だけではなく一年エクレア組の皆が水会に対して期待を寄せたことは確かだった。
「……ついに明日はババロア組との勝負だ! みんな! 気合入れていこう!」
彈野原の質問から一気にどんよりと重くなってしまった空気を変えようと夕影が鼓舞するような発言をする。
「そうだね! 頑張ろう!」
天彩が隣で微笑みかける。夕影は理性が吹っ飛んで今すぐ天彩を抱きしめてしまいたいような衝動に駆られる。
――ダメだ、ダメだ。
良心との呵責に苛まれていた夕影を正気に戻したのは、水会の一言だった。
「そういえばさ、結局、水会さんのお姉ちゃんって有名なアイドルなの?」
不躾に無粋に、無相は疑問を投げかける。
「あ、そういえば言ってませんでしたね……
私のお姉ちゃんは本名、水会 柚苺良、
水萌 ユイラ(みなも ゆいら)って言えば分かりますか?」
次回は6月29日7時更新です☆




