きっかけ
「とにかく! みんなそろったことだし久しぶりにみんなで作戦会議も兼ねたおやつタイムにしようぜ!」
夕影がそう言って水会が用意してくれたお菓子の方に目を向けると……
「いわれなくても、もうたべて……うまうま」
「ここのお菓子はやっぱり美味しいな……もぐもぐ」
彈野原とユルゲンスが両手でケーキを鷲掴み、貪っていた。
「まだ、食べちゃダメって言ったんですけど……」
水会は申し訳なさそうな目で夕影をみつめた。
「やっぱり動くとお腹がすくよな」
「うむ、腹が減ってはアイドルが務まらぬということだ」
そう言って彈野原が次のケーキを手に取ろうとしたところ……
「あー! それ私が食べようと思ってたやつー!」
天彩が勢いよくそのケーキの下にダッシュし、それに続いてぞろぞろと他の皆もお菓子の方へ歩みを進めていた。
「じゃあ、私たちもいただこうかしら……」
「あのスフレ美味しそうね」
「私あの意味ありそうなやつー!」
「有意味、意味ありそうなやつってどれのことだよ……」
気がつけばお菓子を中心として輪になるように皆が笑顔で集結している。寧静で平穏、こんな生活がずっと続けばいいのにっていう常套句がぴったりの平和的状況。
――やっぱり、美味しそうにおやつを食べる女の子達って絵になるよなあ。見てる方も幸せになってくるぜ。
夕影はまた一人で両手に花の黒一点の状況を楽しむとともに、惟斗という名前をつけてくれた両親に感謝した。
最初はお菓子についての話をしたりして他愛のないおしゃべりを楽しんでいた一年エクレア組のメンバーであったが、誰が始めたのか、話題の中心は水会になっていた。
「ほんと水会って歌もダンスも上手だよな!」
「私が審査員をしていたら余裕で合格させちゃうと思うけどなあ……」
水会は「えへへ……それほどでもないです」と謙遜しながら、嬉しそうな顔ではにかんでいた。
「そう言えば……水会はなんでアイドル目指そうって思ったんだ?」
彈野原が言ったその言葉は何気ない一言であった。それは取るに足らない些細な一言で、良くあるありきたりな質問だっただろう。
だが、水会にとってはその言葉こそが全ての元凶ともいえるようなことで、触れては欲しくない部分であり、侵すべからざる領域だった。
「…………」
矢庭に水会の表情に翳り、そのまま水会は黙り込んでしまった。それを見かねた天彩が咄嗟に言った。
「雪凍乃ちゃん! それより、好きなお菓子はある?」
「おいおい、私の質問がっ!」
「唯虎!」
ユルゲンスが彈野原の言及を制しにかかったところで水会が首を横に振った。
「ユイアーネさん、いいんです……そして心結さんもありがとうございます……」
水会の覚悟は出来ていたようで、皆は息を呑み、今か今かと水会が話し始めるのを見守っていた。
次回は6月27日7時更新です。




