それは大丈夫
夕影ハーレム新天地
「いやーまさか、惟斗にあんな彼女がいたなんてなー!」
「しかも、一緒の舞台に立ちましょう宣言までされちゃって! 夕影ハーレムは新天地開拓ってことね。きっと私たちはもうポイされちゃって、次回からは一年ババロア編がスタートするってことなのね」
「ポイってのは金魚すくいのアレじゃん……いやだぜそんなの……」
「どうしてそっちの意味が先行してるのよ。捨てられちゃうって意味でしょうが。ってか問題はそっちじゃないし」
彈野原と牧ノ矢が先ほどの光樂のことについて話をしていた。微妙に話がかみ合っていないのが傍目から見てわかった。
「そ・れ・で! 夕影プロデューサー! オーディションの続きを再開しようよ! なんかあの光樂って人が乱入してきてうやむやになっちゃんだから!」
「ちょっ……落ち着けって天彩……」
天彩はどうやらお怒りの様子だった。ちょうど今から自分の出番というところで邪魔が入ってしまったのだからそれも当然だろう。
「でもー……それに意味があるのかな?」
「それってどういう意味!」
「そのままのいみー!」
天彩の隣で無相が再びオーディションを開催することに異議を唱えていた。どうやら無意味なことはしたくないという無相の性分に合わなかったらしい。
「まだ、いまだに舞台で歌う人が決まってないんだよ。無相さんはどうするつもりなの?」
「それは大丈夫……」
無相がピンと人差し指を突きたてた先にいたのは……
「え? え? 待ってくれ……なんで、俺なんだ?」
無相が指名したのは夕影だった。当の本人、夕影はわけがわからずあたふたしていた。
「だって、あの光樂君に言われてたじゃん……」
「いや、あれは冗談で……って言うか、そもそもこれだけ女性陣がるのに男性の俺を起用するってのはもったいないっていうか……」
「誰が男性を起用するって言ったのよ……そういうことよね、無相さん」
「うん、そういうこと」
我舞谷が無相のプランを理解したようで横から口を挟んできた。
「わ、私も……良いと思いますっ!」
「水会までっ!」
「え、私まだ分かってない……」
しょうがないなーと言いながら、無相はそのプランを怖じることなくはっきりと言った。
「夕影プロデューサーが女装して出場すればいいって言ってんの」
次回は6月15日7時更新です。