光樂(みつらく)
夕影はこのオーディションの審査員を正式に降りることを決意した。
――だが、そんな夕影の意志は無意味だった。
なぜなら期せずしてこのアイドル選抜オーディションはここで終了することになったからだ。
――ガララララ。
突如、教室の扉が強引に開かれる音が聞こえた。
「ふふふ……やっぱり惟斗だったんだね。一年エクレア組に夕影って男子生徒がいるって聞いて、まさかと思ってつい教室を飛び出して来ちゃったよ……」
夕影は聞き覚えのある声に戦慄した。
――まさか、こんなことって……
「お前……まさか、光樂か! 光樂なのか!」
夕影はかつての友の名を呼んだ。
「やったあ! 僕の名前を覚えてくれてたんだね! 久しぶり惟斗! 元気にしてた? 惟斗と会うのは、小学校以来かな? まさかのまさか、こんなところで会えるなんてほんと偶然でびっくりしちゃった。やっぱり人生って何が起こるか分かんないもんだね。感動の再会。久闊を叙するっていうのかな? って……そんなに怖い顔しないでよ。わかってるって、惟斗にとってはこんな縁は悪縁で、今すぐにでも断ち切ってしまいたい関係なんだよね?」
「惟斗にとって僕は一番の天敵だから」
「忌み嫌うべき存在だから」
「不倶戴天の友だから」
光樂はへらへらと不敵な笑みを浮かべながら続けた。
「――それでも僕たちは幼馴染じゃないか」
夕影と光樂の関係は端的に言えば、幼馴染だ。それ以上でもそれ以下でもない、普通の幼馴染――ただ、光樂はよくいる普通の美少女幼馴染なんかじゃなくって……
「幽絲、なんだそのいかにも悪役、いかにも主人公の対人物的な話し方は……俺たちそんなに仲悪かったっけ?」
「え、今、ゆいとって……え? え?」
早くもオーディション終了!
次回は明日6月12日更新です。




